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第4曲 放課後ティータイム 
2010 / 06 / 11 ( Fri )  21:54








「あ~~、鳴海歩です」
「「「おお~~~~」」」

 軽音部活動場所に、男の声と少女たちの歓迎する声と拍手が響き渡った。





 好奇心に溢れる少女たちの目が、歩に居た堪れない空気に浸らせる。
 何ていうか、無垢な少女たち、というのが歩の第一印象であった。
 
 田井中律という少女に誘われ、放課後しぶしぶ軽音部の部室へと向かった。
 以前に案内してくれた真鍋和の言葉を思い出し、部室前へとくるが、音が全く聞こえない。

(練習をしてるんじゃないのか? なぜ何も聞こえない・・・・・・しかも僅かに紅茶や茶菓子の匂い

が・・・・・・)

 既に自分の頭の中には答えが出ているのに、その『普通』とは違う答えをただ認めたくないだけだ。

(まさかな・・・・・・そんなことある訳が。そもそも高校の部活動だぞ。そんな部費がすぐに底が着

く様なことをやってる訳ない――――)

 そうやって否定し続けて扉をあけると、そこには『紅茶を飲みながらケーキを食べる女子生徒6人の姿』があったのだった。

(まさか本当にやっていたとは・・・・・・)

 頭痛を堪えながら自己紹介すると、ホワホワした女の子と低学年と思しき女の子、そして自分を誘った張本人の田井中律の3名が拍手をしながら歓声を上げた。

「よろしくね~、鳴海君。あたし、平沢唯だよ~~。この子はギー太っていうんだ~」
「よろしくお願いします、鳴海先輩。中野梓です」
「じゃあ、私ももう一度。田井中律、よろしく」
「私は同じクラスだから・・・・・・問題ないよね?」
「琴吹・・・・・・紬、です」

 ギターを抱えながら嬉しそうに言う唯や、礼儀正しくペコリと頭を下げる梓。
 ひらひらと手を振りながら挨拶する律。何故か恥ずかしそうにしている澪。
 そして、少し挙動不審のような、どこか緊張する態度をみせる紬。

 紬に対して怪訝な表情を浮かべながらも、歩はもう一度よろしく頼む、と言う。
 歩は改めて部室を見回す。

(何故音楽室にティーセット一式なんかあるんだ。完全に私室と化してるな)

 良い意味でも悪い意味でも、温かい空気がある場所だ。
 そこでふと一角に目が止まる。

「目標は武道館・・・・・・か」
「アハハハハ、まあ、夢っていうか、そんな感じ」

 テレくさそうにいう律に、歩はふ~んと頷く。

「じゃあ、どんな演奏なのか、聞かせてもらっていいか?」

 歩はどんな曲があるのか聞いてみたのだが、神に競り勝った頭脳を持つ歩ですら、予想外の言葉が唯から紡がれた。

「まずはお茶だよ?」
「・・・・・・・・・・・・は?」

 渋みが漂う紅茶。
 ストーレートティーを丁寧に注ぎ、上品な菓子を御茶請けに席に座って、和気藹々とした一時を過ごす少女5人。
 若干1人、不満そうな顔の後輩がいるが、それでも仕方がないなぁと諦念の表情だ。

 歩も用意された紅茶を一舐めし、そして改めて突っ込んだ。
 
「いや、ちょっと待て。なんで軽音部なのに、部活動中に紅茶を飲んでるんだ」
「え? いつもの事だし」
「むぎちゃんがね、いつもお菓子を持ってきてくれるんだよ~」
「まあ、これが私達なんだ、鳴海君」
「ちょっと変わってると思いますけど、いつもの事なんですよ、鳴海さん」
「鳴海先輩が来た事で少しは真面目いやると思ったのに・・・・・・・・・・・・はぁ」

 変わってるなと歩は呟いて、再びティーセットを手にとる。
 そんな歩に、律が名案を思いついたといわんばかりに手を叩き、彼に提案した。

「そうだ! 私達の演奏、見てもらえばいいんじゃないか? 初演奏の時とか新歓の時とかのさ


「あ、それいいねぇ~~~」

 律のアイディアに唯が賛同する。
 しかしそれに大反対する人がいた。

「私は反対だ!」
「え~~~、なんでだよ~~~澪~~~~」
「当たり前だろ!! あんなのを男の子に、鳴海君に見られたら・・・・・・私は本当にお嫁に行けない!」
「?」

 澪が顔を真っ赤にして反対するので、歩は不思議そうに首をかしげた。
 何か大きなミスをしたみたいだが、それだけで嫁に行けないとかどういうことだろうか。

 しかし律は素早くディスクを取り出してデッキに入れた。

「まぁまぁ。という訳で再生~~~~」
「やめろ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
「澪ちゃん、落ち着いて。落ち着いて」 

 澪を抑えるように紬が「まあまあまあまあまあまあ」と言いつつ押しとどめる。
 微妙にノリが良い紬である。
 あずさは苦笑いしつつ、傍観者である事をを決めたようだ。

「ほぅ・・・・・・・・・・・・」

 再生される映像。
 最初はあずさが居らず、4人で演奏している。
 次々と流れる映像。

 澪が騒ぐ理由であった問題のシーンも、歩は顔色を変えずにモニターを見ていた。
 ・・・・・・・・・澪は顔を真っ赤にし、部室の隅で真っ白に燃え尽きていたが。

 そして再び新しい映像に切り替わり、新曲もいくつか増えて再度演奏が始まる。
 服装がころころと変わるのも、一つのエンターテイメントか。
 ピアニストは、基本的に男はタキシード。女性はドレスと決まっている。
 こういったのも新鮮で中々良いものだ。

 再び新しい映像に切り替わり、あずさも加入していた。
 だが今度は唯がいない。変わりに教師らしき人物が唯のポジジョンに居て演奏していた。
 演奏の終盤、唯が加入して再び演奏が始まる。

 その時、歩の目が細く鋭くなる。
 その反応を、澪を除く皆が気付いて不安そうな顔をする。

 放課後ティータイム。
 彼女達の唯一の欠点は、現時点で女性の感想しか知らないということ。
 男性の感想を聞くのは初めてであるし、何よりも鳴海歩は楽器の違いはあれど『音楽において

世界に認められた一級の才能の人物』だ。
 
 そこら辺にいる多少演奏するのが上手い人や、知人友人に評価されるのとは訳が違う。
 かつてない程の緊張感が彼女達を襲っていた。

「・・・・・・・・・・・・」

 映像が終わり、歩はディスクを閉まって電源を切る。
 緊張するあずさへディスクを渡し、席に座る。紅茶を一口飲み、そして口を開いた。

「楽しませてもらった。ありがとう」

 その言葉に、満面の笑みを浮かべる唯と律とあずさ。
 紬はホッと溜め息を吐き、澪がようやく真っ白の状態から復活した。

「よ、よかったぁ。酷評されたらと思って怖かったの」
「全くだな。よかった」
「いえ~~~~い!」
「安心しました」
「良かったよぉ、良かったねギー太!」

 だがここで、紬だけは誤魔化されなかった。
 彼女は歩の最初の言葉が貶す言葉ではなかった事に対して安心したのであって、歩が曲に対して感想を言った訳ではないと気付いていたからだ。

「それで鳴海さん・・・・・・貴方はどう思ったのですか? 私達の映像を見て」
「え?」
「むぎちゃん?」

 澪と唯がその言葉に驚き止まる。あずさもそこで気付いて固まった。
 歩は紬をちらりと見遣り、ゆっくりと言った。

「俺は元ピアニストであって、J-POPなどの演奏に対しての専門的知識はない。だからその上で評価になるが・・・・・・それでもいいか?」
「ええ。貴方の率直な感想が聞きたいの」
「そうだな・・・・・・皆の武道館ライブが最終目標だとして、それが叶うかどうか、だとしたら可能性はあると思う」
「本当!?」
「本当ですか!?」

 歩の言葉に唯とあずさが声を上げる。歩はコクリと頷いて腕を組んだ。

「ああ。まずは武道館ライブが出来るようになるには、昨今のTVなどで見かける音楽アーティ

ストになる必要があるだろう。方法云々は置いておいて、それに対して重要なのは、オーディエンスだ」
「オーディエンス?」
「ああ。つまり聞き手。皆のオリジナルの曲を大衆が『聞きたい』『あのバンドは好きだ』と思わなくてはならない。そう思う人が多ければ多いほど、人気があるという事。つまりライブの夢が叶うということだ」
「なるほど~~」
「そこに音楽の技術はさして重要なファクターではないだろう。もちろん技術があった方が良い

演奏が出来るし蔑ろにすべきではないが、ソレが合っても受け入れられなければ同じこと。そしてそれは全国にいる数多のバンドグループがそれに当て嵌まり、メジャーデビューなど夢のまた夢として、夢に破れて一般人へと成り下がる」

 歩の言葉にゴクリと喉がなった。
 微妙に話が重い。不吉な言葉が続いて気が重くなる。
 だがそんな彼女たちの心配は杞憂だった。

「そして俺はあんた達の演奏を聴いて、ライブ技術などは分からないが、少なくても『また聴きたい曲だ』と思ったのは事実だ。そしてそれは大きな武器であり、貴重な才能だ」
「おおおおおおおお!!」
「まあ、ピアニストの立場から言わせてもらえば、もう少しあんた達は技術向上と音合わせが必要だとは思うが。音楽に慣れてる奴なら誰でも気付くくらいに合ってない箇所がいくつもあった」
「ガーーーン」

 いちいち一喜一憂する律。
 そんな彼女へ苦笑しつつも歩は肩を竦めて言った。

「だが言っただろ? 一番大事な『また聞きたい』と思わせる才能が、あんた達にはあると。まだまだ未熟だと思うが、少なくても俺は楽しめた。だから楽しかったと言ったんだ」
「そう・・・・・・よかったぁ」

 紬の眉毛がへにょっと垂れて、嬉し気に微笑みが浮かぶ。
 そんな彼女の顔を見て、歩は小さく笑った。
 なるほど、類は友を呼ぶらしい。どの少女たちも自分達の演奏を褒められたことよりも、仲間の演奏が貶されなかった事に対して喜んでいる。
 
 昔の自分は、他人に気遣っている余裕などなかった。
 とにかく自分の存在意義を立てる事に必死で、そして敗北して全てから逃げ出したのだ。

 だから眩しくもあり、同時に羨ましくも思う。

「まあ、軽音楽がピアノと違うのも僥倖だったな」
「え? どういうこと、鳴海君」
「それはな、秋山。まずピアノは正確に弾く事が求められる。日本のコンクールはそれが顕著なんだが、一箇所でもキーを押し間違えたりしたら、それだけでも減点される。そして世界へと出ると、正確性の上に『自分性』が求められるんだ。またそれだけではない。曲に対しての『自分なりの解釈を曲へと反映させる』事、その上で15分以上、連続で3曲以上弾き続けなくてはならない。だから世界はもちろんの事、国内でも上位のコンクールなどでは、出場者は皆、平均20時間の練習時間を費やしている」
「20時間!?」
「20って、寝る間も惜しむって奴ですね・・・・・・」
「ああ。即ち練習嫌いにはこなせないし、それはこの軽音部には合ってないだろう。音楽性も違うしな」

 そう。それは歩が映像を見て感じたことだった。
 まず何よりも、このメンバーが実に楽しそうに演奏をすることが目に映った。オリジナルの曲もその性質が実に反映されていて、それが欠けては曲の意味が失われる。
 それがチラリと見えたのは、平沢唯が序盤欠けていた演奏だった。
 明らかな精彩が欠けていた。曲もまったくノレていなかった。
 そして平沢唯が登場してからの演奏は『自分性』が良く出ていた。これは大きな武器であり、大衆に受け入れられれば、将来的にはその夢は不可能ではないだろう。
 当然だが、今のままでは無理だし、望みは薄い。
 だがその夢に必要な大前提となるものを、根底で持っているのは間違いないだろう。

「うひゃ~~~~、私には無理だ。そんなに練習してたら気が狂っちゃうよ」
「ほえええええ。すごいねぇ澪ちゃん」
「それが世界を狙う人たちの努力なんだろうな。私達のは幸い、コンクールはないからな」
「でもでも。私達もそれくらい練習する気概は必要かと思います」

 関心する一同。
 あずさはムンっと気合を入れていて、小さな身体にはギャップが合って微笑ましい。

(皆、仲が良い。そしてその上で限りない可能性があって、限りない夢と希望に溢れている。ああ・・・・・・やっぱり俺は・・・・・・)

 そんな一同を見ていた歩は、1年前とは考えられないほど穏やかで優しい顔をしている。
 澪はその表情に気付き、焦燥感に刈られた。

(なんだ、その顔・・・・・・なんでそんな今にも消えちゃいそうな顔を・・・・・・)

 胸が急に締め付けられる。

 そう。
 実際に歩が浮かべている顔は、かつて相棒であった少女と別れた直後のような、そして自分の

出生すら否定して土屋キリエに戦いを宣言した時のような、そんな危うい気配すら漂う顔をしていた。

「なあ、鳴海君!」
「! ・・・・・・ああ、どうしたんだ、秋山」
「やっぱり軽音部に入らないか? マネージャーとしてでもいいし、こうしてアドバイスを送るコーチでもいい。たまに来るだけでもいいから!」

 澪の気迫が籠もった言葉に、お喋りをしていた唯たちもびっくりして止まり、澪を凝視する。

「ダメ、かな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 小さく小首を傾げ、少し目が潤んだその瞳。
 真剣な眼差しに、歩は少し逡巡した。

(・・・・・・正直いって、こいつらの演奏は大したことないと思っていた。
 だが、予想以上のものだったのは事実だ。
 また聞きたいと・・・・・・そして何より、

 ――――――自分も演奏したいと)

 え?
 弾く事に意味などないのに?

 時間が無いのにも関わらず、この軽音部に時間をかけるというのだろうか。
 いや、この気持ちが沸き起こったのはきっかけは、否定の仕様が無い彼女達の――――。




「――――――――――――ああ。これからよろしく頼む」 
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