スポンサーサイト 
-- / -- / -- ( -- )  --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 Com(-) * Tb(-) * page top↑ * [Edit]
第3曲  軽音部への誘い 
2010 / 06 / 11 ( Fri )  21:51







「軽音部に入らないか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・は?」


 歩の目の前で大きな声を張り上げる、前髪を持ち上げた特徴的な女の子が、朝っぱらから叫んだのだった。
 歩はポカーンと、口を半開きにして呆けた。




 鳴海歩が桜ヶ丘学園に編入して2日目。
 微妙に気が重い歩。女子高というだけで気が滅入りそうになるのだが、昨日の初日からピアノという腕前を自分の気が向くままに弾いてしまうという失態を犯してしまった。

 あれから、演奏を終えると歩の耳に飛び込んできたのは、無数の拍手と黄色い歓声だった。
 感情に流されるまま弾いていた歩は呆然とし、勧誘を薦めて来る音楽教師や吹奏楽部の生徒達から逃げるように下校した。

 これから何が起こるのか、考えただけで欝になりそうであった。

「ったく・・・・・・浅月のやつ、派手に笑いやがって」

 スーツのネクタイを締めなおしつつ毒吐く。
 それは昨夜の出来事であった。



 歩が帰宅し、まどかと清隆と一緒に夕飯を摂っていると、そこに連絡が入った。
 その人物こそ浅月香介。
 悪魔『水城ヤイバ』の血を引き、現在において生存中の25名のブレードチルドレンの中で最も早く生まれた男。
 何度も歩の命を狙い、戦い、されど共闘した、ある意味で歩の唯一の男友達といえる人間だった。

「おい、鳴海弟! お前、女子高に入ったらしいな! ぶっはっはっはっはっはゲホッ・・・! ゲホッガホッ!」
「・・・・・・・・・咽るほど笑うなよ」
「い、いやだって! お前が女子高! 女子っ・・・・・・! そりゃ確かに地獄だ!」
「・・・・・・・・・・・・」

 余りの爆笑に電話口から声が漏れ、まどかや清隆が目を丸くしていた。
 歩は半目で電話の向こうの主を睨んでいた。
 まあ、その後に向こうで突然起こった打撃音と共にうめき声が聞こえ、高町亮子が電話に出てきて歩を労ってくれた。

 微妙に聞こえるうめき声に汗を流しながらも亮子と軽く雑談とアドバイスを受け、そして切った。
 浅月の爆笑に、歩が殺意という名のヤイバの呪いに目覚めそうになったのは、勘違いではないはずだ。 



 そうして、登校しながらぶつぶつと脳内で文句を吐きつつ、教室に入った。
 どうやら昨日のことは既に噂になっているようで、どこからか歩が昔は日本を代表するピアニストであり、ピアノ界の生ける神話・天才ピアニストの鳴海清隆の弟である事がバレたらしい。

 今の時代、PCさえあれば公的に登録されたことが過去にあればすぐに調べがつく。
 おそらくそこから調べたのだろうと、歩は予測を着ける。

 だが実はもう少し事態は複雑だった。
 それは軽音部の紬が歩について喋っていた時、その会話を数名が盗み聞きして、そこから漏れてしまったのだ。
 だが歩にそれを知る由も無い。

 鞄を片付けてネクタイを緩め、外をボーっと眺める。
 無数の視線を無視しつつ手元に楽譜を取出して、自分のオリジナルの楽曲を書き出す。
 複雑な音符を書き連ね、頭の中でその音を再現しているのか、僅かに頭が揺れ動く。

 その時、HR前にも関わらず誰かが教室に入ってきた。
 勢いよく扉を開け、ズカズカと足音を立てる。前髪を上げた、少しヤンキーに見えなくもない、どことなくだらしない

 制服の着こなし。だが快活な印象を受けなくも無い少女。
 その少女は鳴海歩の前で立ち止まった。
 歩もそこでようやく気づき、顔をあげて少女を見た。

「鳴海、歩・・・・・・くん、だよね?」
「ああ」
「・・・・・・・・・・・・律?」

 視界の隅で、黒髪の女の子と真鍋和が声を洩らしたのを聞いた。
 律と呼ばれた少女は、その声を無視して歩を見詰めて言った。

「突然だけど」
「?」
「軽音部に入らないか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 シーンと教室が静まり返り、爆弾投下の犯人だけが目を爛々と輝かせて歩を見詰めていた。
 歩はその言葉の意味を噛み締め「あ~~」と唸って答えた。

「俺は元ピアニストであって、バンドマンの経験はないんだが」
「構わない! っていうかこっちの才能もきっとあるって!」
「いや・・・・・・その根拠はいったい」
「どうだ!? 軽音部には可愛い子も多いぞ~!? きっとウハウハだぞ~~!! なんていったってファンクラブすらある澪

も゛っ!?」

 ゴスっと、鈍い音が響いて頭部から煙を出しながら崩れ落ちる女生徒。
 その背後には、荒い息を吐きながら拳骨ポーズを取っている女の子がいた。その子はクラスメイトの1人だった。

「何を勝手なことを言ってる! 鳴海君に迷惑だろ、律!! というか最後なにを言おうとした!?」
「・・・・・・・・・・・・(返事がない、ただの屍のようだ)」
「だ、大丈夫か?」

 一瞬、目の前で倒れる少女が浅月香介と被ったのは笑えたが、歩は冷や汗を流しながら殴った人物を見た。

「ごめんね、鳴海君。ウチの部長が勝手なこと言って」
「ウチのって・・・・・・ああ、君が真鍋さんが言ってた軽音部の秋山さんか」
「え、うん」
「・・・・・・・・・・・・ってぇ~~~~、酷いじゃんか澪~。たんこぶできたぞ~」
「律が私を生贄にしようとしたからだろ!」
「そこは、ほら。幼馴染のよしみでさ」
「意味が分からんわ!」

 と、歩を置いて漫才を繰り広げる2人。
 歩はぼりぼりと頭を掻いて、殴られた少女に言った。

「あ~~~、とりあえず悪いんだが、俺は軽音部には・・・・・・」
「じゃあ、やっぱり吹奏楽部!? やっぱりそうなのか~~~」
「!!」

 律の吹奏楽部という言葉に、クラスの数名が反応していた。その子たちは吹奏楽部の部員であった。
 彼女たちは歩を部に誘おうと思っていたのだ。律の言葉に内心で大慌てだったのだが、そこに期待の光が舞い込んだ。
 だが、そんな彼女達の期待を歩は木っ端微塵に壊した。

「いや、吹奏楽部にも入らないが」
「え、じゃあ何にするの? それとも入らないで帰宅部?」

 落ち込む吹奏楽部員たちに気づかず、歩は澪の問いに答えた。

「まあ、帰宅部だろう」
「そっか・・・・・・じゃあ、さ。一度だけでいいから私達の演奏、聴いて貰えないかな?」
「演奏を?」
「うん。鳴海君のような才能を持った人に、一度私達の演奏を聞いてもらいたいんだ。で、どう思うか知りたいんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「ダメ、かな?」

 かなり恥ずかしい言葉を口にした澪は、既に顔が真っ赤だ。
 元々が内気な性格の澪だったが、彼女がここまではっきりと言えたのも理由があった。
 澪は昨日の歩の演奏で、どうしても卓越した才能の人物による、自分達の評価が気になった。
 負けたくないという生来の性格と、今後の軽音部のため、武道館ライブへの道のため、『必要』だと思ったのだ。

「・・・・・・・・・・・・分かった。招待に預かろう」
「うおっしゃ~! じゃあ放課後な!」
「復活はやっ!? おい、律!」

 倒れていた律がすぐに立ち上がって、勢い良く飛び出していく。
 歩はその様子を見て、傍にいる澪を見た。

 なるほど、と思う。
 黒髪で長いストレートの髪、整った顔、可愛らしい瞳。容姿に優れた子であった。
 指を見ると、女性の中でも珍しいほど大きな手。いや、長い指であった。
 長くて細い指というのは、ピアニストにとっては優れた才能、優れた演奏をするための一つの武器だ。
 秋山澪が楽器の何を担当しているか分からないが、それでもその指の長さだけでも優れた武器を持っているのが分かる。 

 少しだけ、少しだけだが。
 その容姿が、義姉のまどかに重なって見えた。
 そして『結崎ひよの』という、偽名のパートナーを彷彿させた。
 彼女が良く言っていた言葉を思い出す。


『企業秘密です♪』

 時々、云われた事を思い出す。

『鳴海さんは、もっと自分のために色んなことをするべきです! お兄さんのことばかり比べたりせずに!』

 最後の言葉を想い出す。 

『また、会いましょう』

 
 歩は思う。
 たまには、自分の延命のことやブレードチルドレンの呪いの事ばかり考えず、ムダと思えることをするのもいいだろう。

 彼女達の軽音部、引いては演奏が、ムダなことだと思っていた。
 それが、現時点で思っていたことだった。
スポンサーサイト
ありむんの小話 * Com(0) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
Comment to this entry
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
Trackback to this entry
プロフィール

きゅうり

Author:きゅうり
ローゼンメイデン
マリア様がみてる
さらにけいおん中心の
同人サークル
Crépusculeのブログです。
(クレプスキューレと読みます)
HPが出来るまではこちらで
進行状況、小言、など展開(?)
していきます!!


Crépusculeメンバー
***************
・きゅうり
 (最近おねがい戦士にハマッテマスwww)
・ファーストドラゴン
・ありむん
***************


バナーを作ってみました~。
ご自由にお使いください。
(クリックで元の大きさ200x40です)

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック

月別アーカイブ
カテゴリー
FC2カウンター

ブロとも申請フォーム
ブログ内検索

RSSフィード
リンク
バナー付きリンク

更新する時間ねぇ メンチさん、はらぺこさんのサイト
東方系で活動中
合同誌でお世話になりました!
エヴァ好きな方は
覗いて見てくださいね!
ついにけいおん
ゲーム化!!
きゅうりは絶対
ムギちゃん!!!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。