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第9曲 妖精は未だ神に会えず 
2010 / 07 / 29 ( Thu )  01:25









「・・・・・・・・・・・・」

 一軒家から見渡せる街並み。
 朝靄がかかった展望を、歩は見詰めていた。

「・・・・・・・・・・・・」

 昨夜のライブ初成功を祝して、平沢唯の自宅にて行われた宴会、もとい祝勝会。
 男の自分が女性宅に入るのも宴会に加わるのもどうかと思う歩。
 結局は、満場一致で却下されて問答無用で連行されたのだが。

「・・・・・・ついに、始まったか」

 胸元に手を当て、ボソリと呟く歩。
 己に科されたタイムリミット。その兆候がついに明るみに出た。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・せっかく、決めたばかりなんだがな」
 
 がんばろう、そう思ったばかりの事だった。
 なんとも自分らしい愚かしさだと思う。
 肝心なことはいつも出遅れ後悔する。やはりそう簡単に人というのは変わらないのだ。

「あれ? 鳴海さん? 早いですね。もう起きてたんですか?」
「ああ、平沢さんか。おはよう」

 窓を開けてベランダに出てきたのは憂。
 エプロン姿で出てきた格好を見ると、これから朝食を作るのだろう。
 そこで憂は、歩の目の下に微妙に隈が出来ていることに気がつき驚く。

「もしかして一晩中起きてたんですか?」
「ああ。いろいろあったからな。眠れなかった」
「そうですよね。お姉ちゃんたちのライブ、大成功で良かった~~~」

 眠れなかった理由がライブ成功による興奮だと勘違いしたらしい。

「当事者であるお姉ちゃんたちは、ぐっすり眠っちゃってますけど」
「そうだな」

 こたつで死んだように眠る5人と顧問の教師のことだ。
 くすくすと憂は笑い、歩の横に来る。
 朝日を見て、憂がキレー、と声を上げた。歩はそんな彼女を見詰め、思わず言葉を洩らした。

「なあ、平沢」
「はい?」
「やりたい事があったとして、でも行うには既に遅かったとしたら・・・・・・どうする?」
「え? えっと、よく意味がわかりませんが・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「ん~~、そうですねぇ。私だったら・・・・・・遅くてもやると思います」
「それが中途半端で、無様な結果しか出せないとしても?」
「はい。だって」

 歩へ振り返った憂の答え。
 それは彼女にとって大好きな姉のお世話をすることであり、それをこれからやるとしたら、という事に対しての答えでもあった。



 ――――やりたい事なんですから



 至極単純で、でも難しい。その解に至るのも、そして自らの言葉でそれを口にするのも。
 歩は憂の笑顔とその言葉に、全身に風が吹き抜ける感覚を得ることになった。

 そして。

「そうだよな」

 朗らかに笑った。

「強いな、平沢は」
「そうですか? でもでも、私がそれをしたら、お姉ちゃんはきっと笑ってくれると思うんです」
「・・・・・・平沢のやりたい事って、姉を補佐することなのか?」
「はい!」

 自分達兄弟には無縁の感情だなと苦笑する。
 彼女のその一点の曇りの無い笑顔に、歩は自然と微笑む。その笑顔はあまりにも自然で。
 彼がずっと昔に、失くしたもの。

「そうか・・・・・・優しいな、憂は」

 頭の上にポンっと手を置き、クシャクシャっと撫でる。
 それは彼にとって無意識に出た行動であった。特に他意はなく、爆弾事件の時の竹内理緒にしたように、撫でただけ。

「ふぇぇぇぇ!?」

 ボンっと頬を赤らめ、歩を見上げる憂。
 突然名前を呼ばれた事に驚き、そして手の温もりに驚く。

 だがそんな憂の反応に気付かず、歩は彼女に感謝した。

「ありがとう、憂。俺も・・・・・・精一杯生きるさ」
「? ・・・・・・は、はい」

 その言葉の意味を、憂は分からなかった。
 そして彼女はその言葉の意味を、後に気付くことになる。

 彼女は歩の言葉を思い出し、そして・・・・・・。

 ただ今は、元気になった歩に対し憂はただ嬉しかった。





 





「ねえ、鳴海君は今日は来ないのかなぁ?」
「さぁ・・・・・・?」
「気付いた時は、もう教室にはいなかったな」

 翌日の軽音部部室に集まっていた唯たちは、いつも通りお茶を楽しんでいた。
 少し疲れが残る彼女たちは若干だらけ気味だ。
 しかしいつも居る男の子の姿が何時まで経っても見えず、彼女たちは戸惑っていた。

「昨日のライブが成功したのも、鳴海君のお陰だったのになぁ」
「そうだよなぁ。タイムテーブルとか何を書けばいいんだって話だし」
「私達は歌えばいいだけだったものね」
「CDも販売されてました」
「そうだったな・・・・・・私達の練習も、ずっと見ててくれたし」

 澪がしみじみ呟く。
 初ライブのあの瞬間。頭が真っ白で観客の目が怖かったの瞬間。
 律のドラムの音が耳に飛び込んできた時に自分の手は自然と音律を奏でていた。

 ライブハウスの最後方の壁に、歩が寄りかかって自分達を眺める姿を発見したときは何故か安心した。
 そしてジーンと胸の奥が暖かくなったのも感じた。可笑しな話だが。

「そういえば・・・・・・」

 なんの脈絡もなかったが、澪は気付いた。

「どうしたの、澪ちゃん?」
「いや、私って鳴海君のこと全然知らないなぁって」
「そういえばそうだなぁ」

 澪の言葉に律も同意する。
 そして自然と皆の視線は紬に集まる。

「私も知らないの。鳴海君がピアノをやっていたってことしか」
「あの、私ネットとかで調べたことがありますよ」

 意外にも梓がそう言った。
 おおっ、と関心した声が上がる。

「ネットでは、鳴海先輩のピアノの成績が主な情報でした。他には鳴海先輩のお兄さんのことくらいです」
「ん~~~~~、真新しい情報はないなぁ」
「そうだな」

 律と澪が頷く。
 意外かもしれないが、実は唯ですら知っている情報だ。
 ピアノ界でも神話となっていて、崇め称えられている凄腕の人であり、警視庁では名刑事として君臨する兄を持つということ。
 この情報を聞いて思ったことは、皆が一緒であった。

 兄弟揃って凄いなぁ、ということ。

「そういえば、昨日さ、鳴海君のお姉さん来てたじゃん。綺麗な人だったよな」
「はい。とても」

 律の言葉に梓が頷く。
 ライブ終了後にまどかを紹介され、皆は綺麗なOL女性の体現者とでもいうべきまどかに赤くなった。

「さわ子先生も綺麗ですけど、お姉さんはキリっとしててかっこよかったです」
「なんとなくだけど、澪ちゃんに似てるよねぇ」
「わ、わたし!?」

 紬がポーっと頬を赤らめて言えば、唯が突拍子もないことを口にする。
 澪は唯のあまりにも予想外な言葉に目を丸くして驚いた。

「まあ、そりゃあ私もあんな人になりたいなぁ、って思うけど」 

 澪がブチブチと呟きながら紅茶を飲み、おかわりをして再度口をつけた瞬間だった。
 ガチャっと扉が音を立てて、扉が開いた。
 
「こんにちわ~」
「「へ?」」
「んあ?」
「誰ですか?」
「どなたでしょうか?」

 それぞれの奇声が誰かは想像して欲しい。
 視線の先に居たのは歩ではなく、1人の女子生徒だった。

 この中の誰よりも背が低い。
 しかし印象的なのはその眼光の強さ。可愛らしい容姿よりもその瞳の方が印象的というのも不可思議な話だった。
 その少女は小さくお辞儀をして、皆へと挨拶した。

「どうも初めまして。本日、この学校に編入してきました『竹内理緒』です。よろしく!」








「へぇ~~~、鳴海君と前の学校で一緒だったんだぁ」
「はい。プライベートでもよく遊びましたし(爆弾的な意味で)、清隆お兄さんとも仲良いんですよ」
「「ほほ~~」」
「親の事情で引っ越して付近の家に住んでるのですが、編入した学園に歩さんがいると聞いて驚きました。それで挨拶に、という感じですね」

 思いっ切り猫を被っている理緒。
 歩と出会った頃のように純粋な少女を演じる彼女は、小さな身体と相成って可憐である。

「あずさとは違うクラス、なのか?」
「え? 私のクラスには編入生は来ませんでしたが・・・・・・」
「という事は、あずさとは違うクラスなのか」

 澪がう~む、と唸る。梓自身も今朝からの記憶を辿り、どこかのクラスに編入生が来た云々の会話が無かったか探る。
 そこでふと妙な視線を感じた。

 理緒が澪と梓をジトーっと睨んでいたからだ。

「え? え? ど、どうかした?」
「え、えっと・・・・・・」
「・・・・・・私、2年生ですけど」

 突然ニコニコしていた可愛らしい少女にジト目を向けられた澪は慌てる。
 理緒は理緒で本当はさらに一つ年上なのだが、言われ慣れているとはいえやはり腹が立つ。
 そんな理緒の言葉にビシリと空気が固まり、唯や律がぎょっとした顔をする。

 どうやら彼女たちは皆、理緒の事を梓と同じ1年生だと思っていたようだ。
 唯たちは必死に謝り理緒のご機嫌を取る。

 理緒は、ハァ、と大きな溜め息を吐いて、本来の目的を果たす事にした。

「それで、歩さんはどこにいるんですか?」
「えっと、鳴海君なら今日はまだ来てないよ~~」

 唯がそう答えると、理緒はそうですかと呟いて考え込む仕草を見せる。

「今日は来ないかもしれないぞ」
「そうね。いつも私達と一緒に来てたけど、今日は最初からいなかったから」

 律と紬もそれぞれ自分の考えを口にし同意する。

「よし、じゃあ直接聞こうっと」
「「「「「!!」」」」」

 そして目の前で携帯を取り出し、歩へと電話をかける理緒。
 実は軽音部のメンバーは、誰も歩の携帯番号を知らない。

 男の子という要因もあるし、聞くタイミングが無かったというのもある。
 過去に女子中だったという要因もあり、突如男の子相手に聞くというのも、彼女たちにとっては慣れていない限り難しかった。

「あ、もしもし? 歩さんですか? 私です。理緒です。今大丈夫ですか・・・・・・って、弟さんっていうより良いじゃないですか。
 ええ。久しぶりですね。今どちらにいるんですか?
 私、今日桜ヶ丘学園に転入したんですよ。え? ええ、そうです。それで軽音部部室で皆さんに聞いて電話してるんですが。
 あ、今日は来ないんですか? そうですか。分かりました。また明日会いましょう」
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」

 ―――――ピッ。

「どうやら今日は用事があって来ないようです」
「そ、そう」

 澪が何故か機嫌が眉を顰めて返す。その反応に理緒は目を細め、そして小さく微笑み席を立った。
 ペコリと小さくお辞儀をする。

「では、また明日こちらに伺いますね」
「そ、そっか」
「はい、部長の田井中律さん。恐らく、私も入部すると思いますので、その時はよろしくお願い致します」

 そう言って、出て行く理緒。
 彼女がいなくなってから、5人の彼女たちは一斉に顔を合わせて、

「「「「「「ええぇぇ~~~~~~~!? 入部~~~!?」」」」」

 いきなりの新入部員獲得と、嵐のように現れて消えていった少女に、彼女達はついに絶叫を上げたのだった。










「本当にいいのね、歩」
「・・・・・・・・・・・・」

 歩の後ろにいるのは、保護者となっている鳴海まどか、鳴海清隆の2名。
 今現在、歩がいるのは日本ピアノ協会の建物の前であった。
 理緒からかかってきた電話の直後で、彼女が軽音部に入部したと聞いて頭を抱えた歩であったが、すぐに気を取り直した。

「・・・・・・・・・・・・ああ」

 歩は久しぶりに見る協会の建造物を仰ぎ、小さく頷いた。

 清隆は歩の心境の変化を、そして彼が何を考えているのか、見透かすかのように目を細める。
 清隆はこの歩の変化を嬉しく思うのと同時に、実は反対であった。

(間違いなく『これ』をすれば歩への負担は大きくなり、寿命を縮めるだろう)

 しかし反対することはできない。
 彼はあらゆる意味で、反対できる立場にはいなかった。

 だから清隆は『ソレ』に至る為の条件を再度確認の意味で口にする。

「分かっているな、歩」
「?」
「期間は短い。1週間後の関東ピアノコンクールで優勝し、一ヶ月後の本選の全日本ピアノコンクールで優勝するんだ」
「ああ。分かってる」

 その2つの優勝を手土産にすれば、自分は復活の狼煙を上げられる。
 そして2年のブランクに対して、協会の人間は誰も文句をつけることはできない。

 そうすれば。




「世界3大ピアノコンクールの一つ、

 ―――フレデリック・ショパン国際ピアノコンクール―――に出場できる」




 歩の決意に溢れた言葉に、まどかは心配そうに声を出した。
 彼女の声は震えていた。

「でも歩・・・・・・あんたは・・・・・・」

 まどかは歩に己の身体を大事にして欲しかった。
 でも彼の気持ちを大事にしたかった。
 彼の身体に負担をかける事はなるべく避けたかったのだ。

「義姉さん」

 そんなまどかの声を遮り、歩は振り返って小さく微笑んだ。

「俺は、ショパンコンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクール、チャイコフスキー国際コンクールを全て制覇する」

 それを達成したい。
 するべきだと、歩は誓った。

「それが、俺が生きた証であり・・・・・・あいつらと共に生きていると、誇れると思うんだ」

 そして何より。

「俺が・・・・・・やりたい事、だからな」

 それが、彼女たちから学んだことだった。






 この日、1人の日本人ピアニストが現役へと復帰の狼煙を上げた。
 それは長い間、日本の引率者というべき頂点の人物を失っていた日本ピアノ協会にとって狂喜乱舞する程で。

 天使の指先の復活は、あっという間に関係者へと知れ渡った。









 憂がヒロインと決まってはいません(笑)
 つーか、17話最高でした。これはこの小説に応用できるなぁと、企むこの頃。
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ありむんの小話 * Com(5) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
ありむんSS8話より 
2010 / 07 / 13 ( Tue )  05:56
8話のコピー

ありむんのSS読んでたら描きたくなりました。

歩といろいろなバンド
放課後ティータイムの律ちゃん
ラブクライシスのまき
デスバンバンジー?かな、のサヤカかエリ?つんつん頭
デスデビル?元けいおん部の川上さん

の5人を描いてみました。以上!
* テーマ:絵日記 - ジャンル:日記 *
ファーストドラゴンの小話 * Com(0) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
表紙完成!!(とりあえずこんな感じで) 
2010 / 07 / 12 ( Mon )  21:30
決定けいおん表紙.saiのコピー

今回の同人誌表紙こんな感じにしようと思います。

突っ込みどころ満載ですがご了承下さい。

何しろ絵を描き始めて一年やっと描く事が楽しくなってきたところで

作品なんてどう作っていいかわからない状態で始めたもので

まだこのくらいの物しか作れませんが今後もがんばって

知識をつけ経験も積んで行きたいと思っていますので

今後とも末永くお付合い願います。


今回この表紙のコンセプトなんですが‘カラフル”原色を入れて

みんなを描きたいと思ったので取り入れました。

紬の家を想像してみんなわいわいしてるところ

を描いてみました。(紬の家って公式あるのかな?)

背景を書こうと思いましたが途中までは描いたのですが
(表紙キャラだけでもごちゃごちゃしているので背景も入れると・・・)と

パースうまくかけなかったのであきらめました。

また機会があれば仕上げてUPしたいと思います。

そんな感じで今回表紙を仕上げました。
(時間があれば純ちゃんも入れたいと思いますなんとなく・・。)

今回表紙を描かせていただいていい経験をさせてもらいました。

これからもみなさんよろしくお願いします。

* テーマ:けいおん!! - ジャンル:アニメ・コミック *
Crépuscule進行状況 * Com(0) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
憂完成!! 
2010 / 07 / 11 ( Sun )  07:50
憂のコピー

表紙に使う8人完成!!表紙を仕上げてゆきま~す。
* テーマ:けいおん!! - ジャンル:アニメ・コミック *
Crépuscule進行状況 * Com(0) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
第8曲 初ライブ 
2010 / 07 / 10 ( Sat )  14:56






 皆さん、こんにちは。平沢憂です。
 なんと今日はお姉ちゃんたちの初ライブの日なんです!


 お姉ちゃんたちは既にライブハウスへ出発していて、私も純ちゃんと和さんと合流するだけです。
 私の方がドキドキしてますが、お姉ちゃんはとても楽しそうでした。
 ―――緊張しないのかなぁ。


「行ってきま~~~す!」


 なにはともわれ・・・・・・・・・・・・とうとう本番です!











「こんちは~~~~~、って、ひゃわ!?」
「「「「ひっ―――!?」」」」

 ライブハウスの扉を開けると、そこに広がる光景は5人には刺激が強いものだった。
 真っ赤に染めた頭、スキンヘッドのようなヘアースタイル、毒が強い色で染めたスタイル。

 相手を威嚇するような眼光。それを助長させるトレーナーにツナギのスタイル。サングラスをかけていたり、ガムを噛んでいたり。

 そんなバンドグループたちが蔓延る空間に突入してしまった唯たちは、青い顔をして扉付近で硬直した。
 ギロっとした視線が唯たちに集中する中、意外にも彼女たちの緊張を解いたのは、原因となった彼女たちであった。

「こんちわ~~~~」
「おはよ~~~~~」
「よろしく~~~~」

 あちこちから上がる声。男も女も大勢いる中、皆が澪たちに挨拶をしてきた。

(((((おおおおおおおおおおおおおお)))))

 ホッとした安堵と妙な感動の声を上げる律たち。
 そんな中、律たちに声をかける人物がいた。

「あれ、りっちゃん? 澪ちゃんじゃん!」
「? ・・・・・・・・・・・・あ、まきちゃん!」
「あ・・・・・・久しぶり」

 駆け寄ってきたのは、律と澪の共通の知り合いであり、中学の頃の同級生。
 トレーナーにつなぎ姿で統一した一段の中から駆け寄ってきた、少しウェーブがかかった少女。
 彼女と仲良く話す律と澪に、目を丸くする唯と梓と紬。

 彼女は澪たちよりも早くにバンド活動を始めていて、既にライブの経験も場数をこなしていた。
 実は彼女は、今度律たちを誘おうと決めていたので、いきなり現れた澪たちに驚いていた。

「今回はよろしくね、2人とも」
「いや、こっちこそよろしく。私達、初めてだからさ」
「そうそう。あ、紹介する。こっちがギターの平沢唯、同じくギターの中野梓。キーボードの寿吹紬」 
「私、ラブクライシスのまき。よろしくね」
「よろしく~~~~」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします~~」

 とりあえず挨拶を交わす唯たちであったが、その直後に集合してひそひそ話しを始めた。

「ラブクライシスだって! カッコイイ~~~」
「私達の名前、ちょっと可愛すぎかもしれませんね」
「そうかしら?」
「ティータイムだもんねぇ」
「私は良いと思うけど・・・・・・」

 どうやら自分達のバンドグループ名に、少し疑問が沸いたようだ。
 少し頬を赤らめているところから、若干恥ずかしかったのかもしれない。

 更に言えば、今の唯たちの格好は学校の制服。
 他の人たちは私服であり、それぞれの個性を表した格好であった。

「そうそう。ちょっと聞いてよ皆」
「ん? なに?」

 まきが思い出したように手をポンっと叩き、唯たちに話しかけてくる。

「さっきね、凄いイケメンが来たんだ。超カッコイイの。どこの芸能人かって感じ」
「へ~~~」
「ん? ・・・・・・?」
「ほら、アソコ。受付で書類手続きしてる彼」
「・・・・・・・・・・・・・・あ」

 全員の視線が歩へと集中する。
 梓は気がついた。周りを見渡せば、誰もが歩をちらちらと様子を伺っている。

(良くも悪くも、凄く存在感ある人だもんね・・・・・・カリスマ性って言えばいいのかな)

 思わず納得する。そんな人が自分達のマネージャーをやっているのだ。
 奇妙な感覚だった。

「よう。来たか」
「って、知り合い!?」

 歩が澪たちに気付き、片手を挙げて近づいてくる。
 そんな態度にまきと呼ばれた子がすっとんきょうな声を上げるので、梓としては苦笑するしかない。

「手続きは済ませておいた。後は開始前のリハーサルだけだ」
「ありがとう、鳴海君。さすがマネージャー。仕事が早い」

 澪がそう言うと、歩は小さく微笑み頷く。

「あ! 見てみて! カッコイイなぁ。凄いなぁ。CDがあるんだぁ」

 唯が反応したのは、受付の傍にあるCDだった。
 それはバンドグループが個人的に作り、委託販売している商品。
 唯はおお~~、と声をあげるが。

「その横のものを見ろ、平沢」
「ほえ?」
「自分達のもあるだろ」
「「「「「ええええぇ!?」」」」」

 物凄い勢いで駆け寄る一動。手にとって見ると、確かに『放課後ティータイム』とロゴで描かれたCDがある。
 バックグラウンドには楽器がモノクロ調に展示され、いかにも年代モノのように映っているが、それが自分達の愛用の楽器だということに気付く。

 裏面を見ると、そこには『ふわふわタイム』と書かれ、表面とは違ったシャボン玉の模様で細かな情報が書かれている。
 URLからメンバーの顔が見えない後姿でポーズをとってる姿など。
 何時の間に撮られたんだと梓は思ったが、普通に写真は遠足時の写真や、部室での後ろ姿などを加工したものだ。

「な、なんか感動・・・・・・!」
「は、恥ずかしいっ!」

 対照的な反応をする唯と澪。
 恥ずかしがる澪に肩をポンポンと叩いて「顔は出してないから安心しろ」と優しく言う歩。

「おおおおおお、私達のCD!」
「か、感動です!」
「う、嬉しいんですけど、鳴海先輩の仕事が早くてそっちの方がビックリしてます」

 律はプルプルと震え、紬が目を光らせて律におぶさりながら喜びを表現する。
 梓は頬を紅潮させているが、作るとは聞いていたCDが何時の間にか販売までこぎ付けられている事態に驚いていた。

「それの発売事態は昨日の夜からだ。だから売り上げもまだまだだな。今日のライブでしっかり宣伝することだな」
「うぉおおおおし!」
「気合はいいから、楽屋に行くぞ」
「楽屋!?」
「楽屋って、暖簾とか掛けて「まいど!」って言ったりする!?」
「言わないですって、むぎ先輩」

 なんとも独特感漂う会話に、ライブハウスマネージャーの女性は苦笑しながら楽屋へと案内した。
 まきは「いいなぁ、マネージャーがいるんだ」と声を洩らした。

 どこのグループでもそうだが、何からなにまで自分達で探し、申請し、理解し、行うことは想像以上に手間と労力がかかっていたので、有能と見受けられたマネージャーがいる、しかもイケメンな男性がいる律たちを羨ましがったのであった。









(なるほどねぇ・・・・・・これが『放課後ティータイム』か)

 事前に少年によって提出されたタイムテーブルに従い、スポットライトやらミラーボールやらが変わる様に逐一反応し、その度にリハーサルであるはずの演奏が止まる、またあわあわと慌ててボロボロな放課後ティータイムの面子。

 ライブハウスのマネージャーの女性は興味深そうに見詰めていた。

 数日前から訪れ、自分と議論を重ねて驚く程のペースで『こちらの業界』の常識に対応してきた少年。
 自分から見た限り、実に放課後ティータイムのメンバーに適応したタイムテーブルをあっという間に仕上げて来たと思う。
 それの証拠に、先ほどから彼女たちは不平不満を全く述べていない。

 そんな少年は慌てふためく彼女たちに呆れたように溜め息を吐き軽く肩を竦めているが、口元が僅かに緩んでいるのは見間違いじゃないだろう。

(まさか“あの”鳴海歩がさわ子の教え子『放課後ティータイム』の子たちの傍にいるなんてねぇ)

 他のバンドグループの子は気付いていないようだ。
 もちろん自分が知っていたのはたまたまだった。そもそもクラシックとでは世界が大幅に違う。
 だが自分は仕事上の一環として、『音楽』の雑誌関連は一通りどの雑誌も目を通す習慣を身に着けていた。
 もちろん、流し見する程度だった。

 だがやはりどの世界でも、同じ日本人の、しかも絶大は評価を受けている人物がいたのなら、感嘆の声と共に記憶に残っていたのも当然だろう。
 もちろんすぐに思い出せた訳ではないが、しばらくして思い出したのだ。

(どういうつもりであの子たちの傍にいるか分からなかったけど、なるほどねぇ。ただの下手な子たちって訳じゃない訳か)

 不思議と魅力が溢れる演奏、それが彼女の評価であった。

「いつまでパニックになってるつもりだ~~~。本番はまだなんだぞ~~」
「そんなこと言ったって~~~」
「唯先輩、まだ続いてますよ!」
「はわわ~~~!!」

(・・・・・・・・・・・・大丈夫かしら?) 

 そこはかとなく不安になった。







 


「お姉ちゃ~~ん!」
「あ、憂!」
「来たわよ、唯」
「こんにちわ~~」
「和ちゃん、じゅんちゃんも。やっほ~~」

 本番の1時間前、ライブハウスの外で唯と歩は買出しに出かけていた。
 コンビニエンスストアから戻る途中、反対側からやって来たのは憂たちであった。

 チケットを唯たちから貰った憂たちは今日を楽しみにしていた。少しチケットを使うのが勿体無い、と憂は思っていたりもする。
 それぞれ挨拶を交わす中、唯は憂と純に腕に貼った『バックステージパス』を見せて、何故かその場でくるくる回っていた。
 そんな唯に苦笑していた歩に、和が近づいてきた。

「お疲れ様、鳴海君」
「ああ。そっちもよく来てくれたな」
「それはそうよ。唯たちの晴れ舞台ですもの」
「そうだな。愚問だった」
「皆の様子はどう? 唯は緊張してないみたいだけど、澪たちは?」
「あ~~~・・・・・・まあ、秋山は極度の緊張状態だな。皆も似たり寄ったりって感じだが秋山ほどではない。平沢が異色なだけだ」
「・・・・・・だよね」

 はぁ、と溜め息を吐く和。彼女の方が唯よりも緊張しているように見える。
 余程心配なのだろう。幼馴染にして親友が、正に実力でしか認められない学校外の場所で、一般人の人に聴いてもらう事が。

「まあ、大丈夫だろう」
「? なんでそう言い切れるの?」
「どれだけパニックになっても弾き始めたら嫌でも指が動く。そのようにこの2週間、徹底的にしごいて来た」
「そ、そう・・・・・・」

 そういえば妙に唯や澪がぐったりしていたような、と和は思い出して冷や汗をかいた。
 唯が呻き声で疲れただの、また弾くのだの、妙に呟いていたのはこの事だったのかと納得した。

「どれだけ緊張していようが必ず指は動く。どれだけパニックになろうが口は開く。そうなるように練習した。デビューがボロボロってのは悲しいだろ?」
「そう・・・・・・だね」

 肩を竦めながら言う歩に、和は頷いた。
 デビューの記憶は生涯について来るだろう。それが大失敗の赤っ恥でした、というのは悲しいと和も思う。

 それを考えると、和は歩に感謝しないといけない気がした。

「ありがとう、鳴海君」
「俺に言う必要はないな。あいつらも俺が言わずとも自主的にやるようになっていた。全てはけいおん部への愛情故か、ただ音楽が好きなだけか・・・・・・つまりはそういう事だ」
「そっか」

 なんだか嬉しくなった和は、満面の笑顔で唯を見ていた。

「お~~い! のどかちゃ~~ん、鳴海く~~ん。行くよ~~~!!」
「はいはい」
「前見て歩きなさい、唯!」

 ―――さて、ついに本番か。
 歩は元気一杯な唯を見守りつつ、夕焼け空となった茜色の空を見上げた。
 雲がまばらに点在する空は、とても高かった。










 ―――あぁ、カミサマお願い 一度だけのMiracle Timeください


(ったく・・・・・・本当に楽しそうに演奏しやがる)

 歩はライブハウスの一番後ろで壁にもたれながら、皆の雄姿を眺めていた。
 ときどき、皆と視線が重なり、その度に満面の笑顔で笑い返される。

「良い曲ね、歩。なかなか上手じゃない、あの娘たち」
「ああ」

 歩の隣にはまどかがいる。
 まどかも楽しそうに唯たちの演奏を聴いていて、小刻みに身体が動いている。
 誘って正解だったようだ。

(・・・・・・・・・・・・本当に、楽しそうに)

 アワアワと慌てふためいていた彼女たちだったが、既にステージ上ではその様子は見られない。
 ライブハウス内は意外なダークホースの登場に盛り上がっている。
 容姿的に優れた彼女たちだが、その演奏も盛り上がるには十分だ。
 初ライブは大成功と言ってもいいだろう。

 なのに。


 ―――もしすんなり話せればその後は・・・どうにかなるよね



(クソ・・・・・・・・・・・・)

 心の奥底で、喜んでいない自分がいる。
 嫉妬している自分がいる。
 ひがんでいる自分がいる。

「ありがとう、鳴海君。彼女たちのサポートをしてくれて」
「山中先生・・・・・・いえ、別に」
「ふふふふ」
「あ、顧問の先生ですか。歩がお世話になってます」
「いえいえ。こちらこそ――――」

 いつの間にか横にいた山中さわ子先生に目線で挨拶し、すぐに舞台へ目を向ける。
 ぺこぺこと頭を下げて挨拶するまどかとさわ子先生は完全に無視だ。

(中野・・・・・・梓・・・・・・)

 小さい体で、バンド内で唯一年齢が違いながらも技術的には一番上手い。
 だがそんな彼女は、先輩である彼女たちの事が大好きで堪らない、そう目が言っている。
 音楽が好きだと、全身で表している。


 ―――ふわふわ時間。


(田井中・・・・・・律・・・・・・)

 気分屋な彼女はドラムで暴走しがちだが、不思議と彼女たちの演奏とマッチしている。
 皆の様子を一番後方から見て、それぞれの演奏する姿に嬉しそうに頬を緩めながらテンションを上げている。
 このメンバーで演奏するのが、楽しくて仕方がない。
 そう、云っている。

(秋山・・・・・・澪・・・・・・)

 一番顔色が悪かった彼女だが、今は輝いている。
 額から零れる汗が彼女の笑顔とベースにコラボし、一枚の絵を形成している。
 そんな一番容姿が優れた彼女に、今、恐れるものはない。


 ―――ふわふわ時間。


(寿吹・・・・・・紬・・・・・・)

 バンド内で一番己を知る人物。そして自分に特大の衝撃を放った子。
 今でも彼女のピアノはもうやらないのか、という声と潤んだ瞳が忘れられない。
 優しい彼女は何か感じたのか、あれから突っ込んでこない。だが普段は何か聞きた気な態度を見せている。
 そして現在、彼女はその優しさを全く隠さず、その心をキーボードにぶつけている。
 故に、彼女独自の音が奏でられていて、放課後ティータイムの音質に厚みを与えている。


 ―――ふわふわ時間。


(平沢・・・・・・唯・・・・・・)

 何も考えていない、年中能天気な少女。
 己とは間逆のベクトルの少女。何も悩みなどなく、自由気ままに生きてきた彼女。
 だがそれを優秀にも己と声とギターに表現できている。
 技術は未熟でも、彼女が笑えば観客は歓声を上げ、彼女が振り向けば手を振って喜んでいる。

 どこか憎めない、そして力になってやりたいと思わせる放課後ティータイムのメンバー。
 だが自分はどうだろうか。

 今の自分は、彼女たちに相応しいのだろうか。

(いや、違う)

 共に、心の底から笑いあってみたい。
 何のわだかまりも無く、心の底から。

「皆、ありがと~~~~~~!!」

 演奏が終わり歓声に包まれる一同を眩しそうに眺める歩。
 今にも泣き出しそうな歩に、唯はその心情を気付かずに嬉しそうに手を振る。

「ありがと~~~~~~~!!」
(そう・・・・・・だよな。無意味なんかじゃ、ない、よな)

 歩も無意識に振り返した。
 嬉しそうに自分へと手を振ってくる5人が眩しい。
 唯へと微笑み、梓へと微笑み、澪へと微笑み、律へと微笑み、紬へと頷く。



 ―――そして、その瞬間はやって来た。



「ごほっ・・・・・・こほっ・・・・・・!」



 小さな咳が、出た。
 風邪などまったくひいていない、初期症状すらないにも関わらず。


 口元を押さえた歩の目は、大きく見開かれていた。
ありむんの小話 * Com(7) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
梓完成!! 
2010 / 07 / 10 ( Sat )  02:54
あずにゃんのコピー

表紙8人描きたい中七人目一応完了!・・・次とん憂描き中・・・
* テーマ:けいおん!! - ジャンル:アニメ・コミック *
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ゲームの小話 
2010 / 07 / 04 ( Sun )  22:20
PSP版のけいおんが9月30日に発売しますねー!!!



誰がなんて言おうとムギちゃん使いますww
ムギは俺の(ry

コミケ前に出たら良かったんですがねー。
まぁSEGAさんはその前にミクがあるからキツイかw


あとはそう、アイマス!!!
ライブでアイマス2の情報公開されましたね!!!!

やべぇ

みwなwぎwっwてwきwたwwwww


貴音さぁぁぁぁん

箱で貴音さんとか!!!

うひょうww

ゲームの話ばっかでマジで原稿進んでないきゅうりですが皆さんに迷惑かけないよう頑張り・・・ますよ?


ここ最近の原稿時の音楽はもっぱらジャッキーチェンのプロジェクトAww
きゅうりの小話 * Com(0) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
唯完成!! 
2010 / 07 / 04 ( Sun )  04:09
唯とんのコピー
表紙8人描きたい中六人目一応完了!・・・次とんあずにゃん描き中・・・
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さわ子完成!! 
2010 / 07 / 01 ( Thu )  11:09
佐和子先生のコピー

表紙8人描きたい中五人目一応完了!・・・次は唯とん描き中・・・
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プロフィール

きゅうり

Author:きゅうり
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マリア様がみてる
さらにけいおん中心の
同人サークル
Crépusculeのブログです。
(クレプスキューレと読みます)
HPが出来るまではこちらで
進行状況、小言、など展開(?)
していきます!!


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