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紬完成!! 
2010 / 06 / 28 ( Mon )  03:30
紬のコピー

表紙8人描きたい中四人目一応完了!・・・ 先生描き中・・・
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律完成!! 
2010 / 06 / 22 ( Tue )  05:13
けいおん三人のコピー

表紙8人描きたい中三人目一応完了!・・・
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和完成!! 
2010 / 06 / 19 ( Sat )  07:56
けいおん二人のコピー


表紙8人描きたい中二人目一応完了!・・・
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澪完成!! 
2010 / 06 / 18 ( Fri )  05:33
澪のコピー


けいおん同人誌表紙用の絵澪を仕上げました。

このクオリティになると思います。

一人に2日かかってしまう現状どうすれば・・・。ちなみに8にん描きます。
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色塗り中・・・ 
2010 / 06 / 17 ( Thu )  05:49
澪のコピー

ああ~表紙塗りが大変だ!けいおんキャラ多すぎ!!

澪?なんか全然澪って感じがしない・・・

自分で考えた服装にするとかなり別キャラになっちゃいますね。

どうしよ・・・とりあえず澪の仮塗りあっぷしま~~す。

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表紙のデザイン変えてます。 
2010 / 06 / 16 ( Wed )  01:46
けいおん表紙2

今、線画仕上げ中・・・。

なんだか表紙に全員乗せたくなったのでこんな感じの絵に仕上げようと思います。

下書きあっぷしま~~す。
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第7曲 爆裂ロリータ 
2010 / 06 / 15 ( Tue )  22:39








「歩、郵便が届いているぞ」
「ああ、ありがとう」
「ねえ歩。これ何?」
「今度、軽音部が参加する『秋祭り前夜祭』のライブ登録書だ」

 歩は封筒を開け、事前の審査が通った旨が記載された文書を眺めた。
 

 ――――結果は合格。


「良し。合格だ。これで軽音部は2週間後のライブに参加できるな」
「そう・・・・・・ねえ、私も行って良い?」
「それなら私も―――」
「姉貴は良いが、兄貴はダメだ。来るな」

 ガーンとショックを受ける清隆を無視する歩。
 まどかは嬉々として前夜祭ライブのパンフレットを眺めた。











「という訳で、3日後に打ち合わせがあって、ライブ本番は2週間後の土曜日、当日の3時間前からリハーサルがあるから」
「「「「「おお~~~~!!」」」」」

 歩の言葉に、一同の歓声が響いた。
 初ライブというだけに、興奮も最高潮といったところか。

「りっちゃん! ライブだよ、ライブ!」
「フッフッフ。ついに私達の時代が来たかぁ!」

 鼻息を荒くする唯と律。

「人がいっぱい来る・・・・・・・・・・・・ううっ!」
「がんばろう、澪ちゃん」
「澪先輩!」

 顔を青くしてフラッとする澪と、それを支える紬と梓。
 なんとも対極的な反応であった。

「ま、こういうのは慣れだ」

 軽~く言う歩を澪はジト目で見詰めるが彼は無反応だ。
 すると、律は思い出したようにポンっと手を叩いた。

「そういえば中学の同級生で、同じようにバンド活動してたな・・・・・・」
「マキちゃんのこと?」
「参加メンバーの中にいるかもしれないぞぉ!」

 どうやら知り合いがバンドを組んでるらしく、律と澪は参加者リストを見る。
 当然だが、まだリストは無かった。

「とりあえずは3日後の打ち合わせに行くが、本番まで俺が全部準備をしておく。もちろん経過や必要なことは全部皆に報告しよう。どうだ?」

 資料をサッサッと直して、必要事項を記入していく歩をみて、皆は口をそろえて言った。

「「「「「た、頼もしい」」」」」

 過去に部活申請漏れやら、学園祭参加申請漏れだのと、真鍋和に迷惑をかけ続けた一同は、歩の有能な補佐に感動した。

 








 紬は、歩に対して何度か話しかけようとしたが、タイミングを逸してプライベートな会話をすることが出来ずに練習が終わってしまい、ウキウキしながら帰る一同の中で微妙に挙動不振な紬がいる中、都内の某病院内にて、ある会話が行われていた。

 病院に現在入院しているのは、ブレードチルドレンのメンバー。
 その中でも『最も頭がキレる』といわれ、『爆発物のエキスパート』『爆炎の妖精』と称される人物。
 竹内理緒。
 その少女である。

「そう・・・・・・ですか」

 彼女は全てを聞かされた。
 これまであった、ブレードチルドレンのこと。カノン・ヒルベルトの死亡。ミズシロ・火澄の存在、そしてその意味。鳴海歩と火澄の対立。鳴海歩が清隆の思惑を打破し勝利したこと。

 そして―――――鳴海歩の近い将来の死亡と、ブレードチルドレンの果てしない戦いの人生。

「で、あんた達はどうする?」
「・・・・・・・・・・・・」

 ブレードチルドレンとの橋渡し役・土屋キリエ。
 鳴海歩から事件の顛末後から全ての情報を託され、以後はブレードチルドレンたちの面倒を見たり相談に乗ったりなど、いろいろと忙しい身の女性である。性格は微妙にまどかに似通っているところもあり、某美少女によれば『歩といちゃついた』過去をもつ。

 理緒は祈るように両手を重ね、ジッと目を瞑って黙っていた。

(弟さん・・・・・・まさか、そんなことになっていたなんて)

 思えば、自分は鳴海歩という1人の男の子に対して、ずいぶんと酷い事を言っていた。
 カノン・ヒルベルトとの戦い前は命を狙ったので言わずもがな、その後も散々『貴方は私達の希望の光だ』と言い続け、その重荷を押し付けた。

 結果からいえば、自分達ブレードチルドレンよりも早くに破滅し、自分達よりも早くに死亡する身であったのだ。

「・・・・・・何、泣いてるのよ」

 キリエが苛立ったように声を上げた。
 彼女は最後まで歩の戦いを見届けた1人だ。その経過、つまり歩がまさに自分の全人格・出生すら否定してボロボロになってまで戦い抜いたその姿を、キリエはその綺麗な瞳で見てきた。

 理緒の瞳から零れ落ちた涙に、キリエは無性に腹が立ったのだ。
 それは『どっち』への哀れみか、怒りだったのか。

「・・・・・・弟さん、いえ」

 理緒は常に歩のことを『弟さん』と言ってきた。だが。

「歩さんに、会いに行きます」

 理緒の言葉に、キリエは目を細める。
 会いに行ってどうするのか、一言二言の感謝でも述べるつもりか、そういう目であった。

 そんなキリエの無言の反対に、理緒は首を振った。

「歩さんと、同じ学校に行きたいんです」
「桜ヶ丘高校に?」
「はい」

 理緒は小さな身体をベッドから起こし、よいしょ、と声を出して地面に降り立った。

「あの人と一緒にいて、少しでも傍にいたいんです。そして私なりの―――」

 答えを見つけたい。
 そう理緒は振り返って笑って云った。






 理緒という女性の特徴を端的に挙げれば、最高の知能・身体能力を誇るブレードチルドレンの中で一番小さい身体でありながら最も精神的に強い、そう評価できる。
 どんな絶望的な状況であろうが諦めず、そのズバ抜けた知力で打破し、諦めない気高い少女。

 それはブレードチルドレンのメンバーで、浅月やアイズ、高町たちにでさえ、『戦いの中で甘える、頼る』ということはしないのだ。
 もちろん戦術的意味合いでは頼るが、一方的に縋る、ということはなかった。

 だが歩に対してだけは違った。

 彼女はひたすら歩を頼った。
 当初は清隆の言葉があったから歩を頼っていただけだが、彼女はその戦いの中で歩を自然と信頼していき、そして心から歩を頼った。

 それはある種の依存といってもいい。

 それが、喪われる。

「待っていて下さい、歩さん」

 病院の廊下を歩く。
 薬品の臭いが鼻を突き、騒がしい喧騒が理緒を揺さぶる。

 ―――絶対に訪れる、医学上から見ても致命的な臓器衰弱による死亡。

 自分にできることは、ない。

「ひよのさんがいない今・・・・・・私が傍にいます」

 ギリっと唇を噛んだ。
 歩の傍にいて、少なからず自分達も彼女に助けられた。
 だが。
 それは、裏切りであった。

「私は裏切らないっ」

 今度は負けない。
 理緒は、かつての歩の相棒―――結崎ひよの―――に対して激しく憤りながら、その小さな身体を必死に動かし、目的の地へと向かっていった。

「私は、信じます。貴方は死なないって。貴方に、救いはあると」

 自分は信じ続ける。
 遠い未来、自分の傍にどんな形であれ、歩がいると。 



続く。




短い・・・・・・。
だけど切りが良いのでここでストップを。
次回はライブ。そして編入です。
ありむんの小話 * Com(5) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
ありむんが書いた小説01 
2010 / 06 / 12 ( Sat )  02:48
歩と憂のコピー
ありむんの小説の第6曲前半の様子を思い浮かべて

ラフ画描いたのであっぷしま~~す。

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第6曲 歩と紬 
2010 / 06 / 11 ( Fri )  22:01







 捨てたから、実は愛しかったのだと思い知った。
 再び触れて、やはり好きだったのだと知った。

 それと同時に。
 愛しさ故に、一度捨てたから再び触れて良いのか躊躇した。

 だから、心からは楽しめていなかった。



 けれど。
 彼女たちの音楽に触れ、彼女たちが本当に楽しそうに弾いているから。

 本当に、音楽が好きで好きでたまらないと、そう笑顔で語っていたから。
 
 自分も同じ気持ちで―――――。

 ――――昔の気持ちを。

 そう、一瞬でも思ったのだ。










 


「それでね、昨日の晩御飯は憂特製のグラタンだったんだよ~」
「そうか。それは美味そうだな」
「は、恥ずかしいよぉ、お姉ちゃん」

 朝、生徒たちが通学中の中、偶然遭遇した唯と憂と歩。
 持ち前の明るさから、唯が気軽に声をかけて走り寄り、何故かビシっと敬礼を

して挨拶した。
 歩も穏やかに微笑んで唯に挨拶する。

 そしてふと視界に入ったのが、唯の後ろにいた彼女にとても似た雰囲気を醸し

出す少女であった。
 その少女は歩の視線に気付くと少し恥ずかしそうにして唯に隠れ、歩を伺って

いた。
 
 唯と雑談しつつ学校へ向かう。
 そこでふと、未だに自己紹介がしてないことに気付く。

「ああ。そういえばまだ自己紹介はまだだったな」
「ほえ?」
「?」
「初めまして。鳴海歩だ。君のお姉さんと同じ学年で、軽音部に先日、マネージ

ャーとして入部させてもらった」
「あ、あの、こちらこそ初めまして。平沢憂です。お姉ちゃんがお世話になって

ます、というかこれからお世話おかけします」
「あ、ああ」

 憂の言葉に歩は目が点になりつつも頷いた。

(平沢の妹か・・・・・・似てないな。もっと姉に似てボケボケしたタイプかと思った

が)

 随分と失礼なことを考えている歩であった。









(この人が鳴海歩さん、かぁ)

 姉から聞いていた話から感じた印象とは少し違う。



『凄いんだよぉ! こう、じゃじゃ~~~んってピアノ弾いて、じゃらららら~

~と指が流れるようでぇ!』
『むぎちゃんが言ってたんだけど、鳴海君って世界を代表する才能を持つピアニ

ストなんだって!』
『なんていうか、貴公子って感じ?』

『へぇ~~~、なんだか凄い人だねえ』

   

 最近交わされた会話が、どうやら自分の中で目の前の男性のイメージを勝手に

固めてしまっていたらしい。
 だが良い方への間違ってくれたようだ。

 かなり顔立ちが整っていて、ピアスまでしている少し怖い感じの人。
 けれど何処か儚く、淡い。

 それが、憂の初対面の感想であった。

「あ~、俺は君のことを何て呼べば良いだろうか・・・・・・平沢妹? いや、これは

ダメだな」

 歩は自分で考えておきながらすぐに否定する。
 自分が『鳴海弟』と呼ばれる度に、自分の存在が兄に隠れているようで嫌だっ

た。
 だから否定した。

 しかし会って間もない、しかも女の子なのだ。
 いかに遠慮のない、容赦のない性格の歩であっても、常識が欠如している訳で

はないので困り果てた。

「あの、私の事は憂でいいですよ? もしくは平沢妹でも」
「あ~~~~~~、下の名前で呼ぶのはさすがにな」

 ボリボリと頭を掻く。
 そんな歩に憂はクスっと笑って云った。

「そこまで深く考えなくて良いんですよ。お姉ちゃんと同じ軽音部に入ったなら

、私にとっても身近な存在ですから」
「なるほど・・・・・・身近な存在故に下の名前でも構わない、か」
「はい」
「まあ、それはもう少し親しくなってからにしよう。とりあえずは平沢さん、で

いく」
「あはは。はい、それで良いです」
「む~~~~~、なんだか私、除け者扱いだなぁ」

 憂と歩が仲良く話しているのが、自分だけ仲間はずれに感じたのか、唯が頬を

膨らませた。
 
「はぁ・・・・・・どこをどう聞いたらそう聞こえるんだ、平沢」
「憂はあげないよ! 憂は私の妹なんだから、私を倒してからにしないと!」
「お、お姉ちゃん!」

 何故かジーンと感動する憂。

「勝手に言ってろ・・・・・・」

 ガックリと肩を落とす歩はスタスタと早足になって先を行く。
 そんな歩に苦笑しながら「待って~~~」と言いつつ小走りになる唯と憂であ

った。








 鳴海歩の新生活は、意外と悠長なものであった。
 基本的に桜ヶ丘高校は普通の公立学校であり、全国一の進学校である月臣学園

とは学業レベルも進行速度も楽なものである。
 唯一の『女性のみの学校』の環境に身を置いている歩であるが、男性教員もい

るので、そこまで孤独な訳ではない。

 また、鳴海歩は昔から両親にすら無視されるという孤独を味わい、そして兄に

より徹底的に打ちのめされて辛酸を舐めさせられた過去を持つ男。
 そこら辺の一般人よりも、精神的には圧倒的にタフネスであった。

 故に歩は、このような事態でも動揺しない。

「ねえ、鳴海君? 君に次の写真のデータを贈呈しよう! 入部記念品だ」

 いつもように軽音部の部室で放課後、ティータイムを楽しんでいた一同。
 その中で、律が歩へとズイっとデジカメとSDカードを進呈してくる。

「・・・・・・なんの写真だ?」
「フフフフ・・・・・・見たまえ!」

 変に得意気な律に問う歩。
 そしてそんな律に、怪訝な表情をしつつ紅茶を啜る澪と梓。ニコニコと笑顔を浮かべる紬。そして首を傾げつつもケーキを食べる手を止めない唯。
 律はデジガメの画面を見えるように機械を翻し、バッと翳した。

「ブフゥ――――――――――――っ!!」

 紅茶が綺麗に舞った。
 正にそれは、プロレスの技の毒霧である。

「・・・・・・おい。それを俺に渡されても困るんだが」
「何やってるんだ、律~~~~!!」

 その画像は、2年の時に彼女たちが軽音部合宿に行った際の、水着姿の澪画像であった。
 砂浜で黒の水着を着込み、恥ずかしそうにカメラを持つ律を見る澪。
 
 澪ファンクラブメンバーなら、鼻血モノな画像である。
 当然だが澪は顔を真っ赤にしてデジカメを引ったくり、律へと拳骨を落とした。

「い、いやぁ。澪の為に人肌脱いだんだけど・・・・・・」
「いらんお世話だ!」

 ガルルルル、と今にも唸り声を上げそうな澪と、煙を頭から出しつつ突っ伏した状態で言う律。
 そんな2人の遣り取りに苦笑しつつ、歩は言った。

「悪いが俺は興味がないんだ。田井中、悪いな」

 歩の言葉は何気ない、特に深い意味もない言葉である。
 だが、その言葉に澪の顔は暗くなった。
 一瞬だけ、一瞬だけだが顔が歪んだ。それは本当に、本人すら気付かぬほどの無意識の反応であった。

 そしてそれを見ていたのは、自分の発言で己に視線が集まっていた彼女たちではなく、歩自身であった。

 故に、目を伏せ。

「――――まぁ、秋山はスタイルいいよな。綺麗だと思うぞ」

 1年前から変わった、彼なりのフォローという優しさであった。

「だよねぇ。澪ちゃんスタイルいいよねぇ」
「ですよねぇ。羨ましいですよね」
「はい。澪先輩綺麗です」
「~~~~~~~~~~~っ」

 澪は歩の言葉と、皆の褒め言葉に一層真っ赤になった。
 歩はそんな彼女に小さく笑みを浮かべ、そして紅茶を口に含んで楽譜にペンを走らせる。
 それからは澪と律が再びじゃれ合い、唯と梓がそこに加わって
 唯一、紬だけが歩へと優しく微笑んでいた。






 それから数時間が経ち、彼女たちも一通りの練習を終えて帰路へと着いていた。
 ちなみに、電車で帰るのは紬と歩しかいない。

 必然的に、2人っきりになる。

「あの・・・・・・」
「ん?」

 ガタンゴトンと、心地よい音が車内に響く中、歩と紬は隣に座りあっている。
 紬は歩を何度も伺い、そして決心したように聞き出した。

「軽音部には、慣れました?」
「ああ。楽しませてもらってる」
「そ、そうですか。よかった~」

 紬は手を合わせて喜びを表現する。

「軽音部の皆、私とっても大好きなんです。大事なお友達です。だから、嫌いになって欲しくなかったんですよね」
「・・・・・・そうか」
「はい。特に・・・・・・私が憧れたあの『鳴海歩』さんなら」
「俺が? 兄貴の間違いだろ」

 紬の言葉は歩の勘に触った。
 歩の周囲の人間で、誰もが『ピアノ』について言ってくるなら、まずは兄の鳴海清隆について言ってきたからだ。
 
 鳴海清隆の弟なら、ピアノをやるべきだ。
 鳴海清隆の弟なら、これくらい出来て当然。
 あの神話、鳴海清隆の弟なんだから。
 凄い才能を継いでいるんだから、ピアノはやるべきだ。

 その才能が『清隆のクローンであるから』という真実が発覚した今、事情を知らない人間がピアノの感想を言うと、常にそれに触れることになる。
 いくら兄に最終的に勝利したとはいえ、またか、とウンザリするの仕方がないだろう。

 故に、その声が不機嫌なものへと変わる。
 紬は焦った。

「え? ち、違います。確かに鳴海清隆さんのピアノは・・・・・・凄いと思います」
「・・・・・・・・・・・・」
「けれど、私は貴方のお兄さんよりも、天使の指先と云われた鳴海歩さんのピアノのファンなんです」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから聞きたかったんです。

 ―――――ピアノ、もうやらないんですか?」

 紬の言葉に、歩は己の心臓に矢が突き刺さったように感じた。
 最終決戦が終わった後、誰も言わなかったその言葉。兄も義姉も友人も宿敵も。そして相棒も。

 自然と、紬から離れたくなった。

「・・・・・・・・・・・・」
「ファンだったから・・・・・・突然いなくなった事でショックだったんです。調べたら辞めたという事実しか出てきませんでしたから」
「・・・・・・・・・・・・」
「私もその時に迷いました。そんな時、軽音部の皆と出会って、今は軽音部に入ったことになんの後悔もありません」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
「はい」

 沈黙が続いた。響くのは線路を走る電車の音と、車掌のアナウンスの声。
 歩は乗り換え駅に到着したので席を立つ。

「琴吹」
「は、はい」
「先ほどの答えだけどな・・・・・・」

 歩は振り返って笑った。
 その顔は、あまりにも儚く、そして昔と同じように諦念の感しか浮かんでいなかった。

「今更やっても――――――――もう遅いんだよ」
「・・・・・・・・・・・・え? それってどういう―――」

 紬の言葉に答えることはなく、歩は駅の喧騒の中に消えていった。
 紬は思わず立ち上がり駆け寄ろうとするが、電車のドアが閉まったことでそれは叶わなかった。

「なにが・・・・・・あったっていうの・・・・・・」

 ピアニストになるのは、年齢など関係ない。
 20代後半でプロのピアニストになった人もいる。年齢なども関係ない。それなのに遅いとはどういうことだろうか。

「なにが・・・・・・」

 憧れから身近なものに。
 そして仲間にあった『異常事態』を、初めて気付いたのだった。
ありむんの小話 * Com(1) * Tb(0) * page top↑ * [Edit]
第5曲  歩の新たな日々 
2010 / 06 / 11 ( Fri )  21:57







「最近なんだか楽しそうね、歩」
「ああ。結構楽しんでる。」
「軽音部のマネージャーだっけ? 何でマネージャーでなの?」
「さあな。ただその時、たまたま気分が向いた。それだけさ」

 歩はまどかと清隆の疑問に肩を竦めて、朝食の食器を片付けて鞄を抱えた。

「その割りには、真剣にバンド音楽の知識を詰め込んでるじゃないか」
「……まあな。残りのタイムリミットまで、あいつらに時間を使ってもいいかって思ったから、かな」
「何故だ?」

 会って間もないのにと、清隆の鋭い神の視線が突き刺さる。
 それと同時に、まどかの心配する視線も。

 歩は扉を開け、首だけを振り返って朝日を浴びながら答えた。

「あいつらの音楽が、俺にピアノを弾きたいと思わせてくれたからだ」






 歩の行動は迅速だった。
 マネージャーでとして入部が決まり、顧問の沢子先生に届け出て受領されると、すぐに彼女たちの音楽のMDとディスクを貰った。

 それを家でデータを吸い出して編集。写真のデータを使ってジャケットまで作りシングルとアルバムを作った。
 流石は神の弟なだけはあり、センスもずば抜けていたので実にかっこいいジャケットが完成した。
 また同時に『放課後ティータイム』の公式ホームページまで開設し、メンバー紹介から活動報告、動画まで載せたのである。

 だがここで上手いのが、彼は編集する事で、彼女たちの顔を隠して、尚且つ所在や学校をバレないょうにしたのだ。

 そうして一仕事を思った終えた歩は放課後、彼女たちとお茶を飲んでいた。
 入部して数日にも関わらず、すっかりと部活中にお茶という行為に慣れてしまった。
 そこで、ふと唯が思い出したように歩に聞いた。

「そうだ。ねえねえ、鳴海君」
「ん? 何だ平沢」
「ちょっと気になったんだけど、鳴海君って前はどこの学校だったの?」
「前? 前の学校は私立月臣学園だが」

 何気ない歩の言葉に、ビシリと固まったのが澪と梓であった。
 口の中の紅茶を吹きそうになって、必死に堪える。

「つ、つ、つ、月臣学園!?」
「えぇえええええええええええ!? あの全国でもトップクラスの超難関学校ですか!?」
「いや、学力だけじゃなくて、スポーツなどの様々な分野でも有名だぞ、あの学校!」

 2人は自分が知っていた知識を堪らずに曝け出す。
 そう。月臣学園は全国の私立の中でもトップクラスの進学校にして超難関学校である。学力は言わずもがな、多分野においてもトップの人間が集う学校で有名であった。

「ああ、そういえば聞いたことあるなぁ。月臣学園」
「私も聞いたことあります」
「ん~? なんかTVとかでも特集組まれてたような・・・・・・でも、そんな良いところからココに来るなんて、残念だね~」
「いや、俺は全然気にしてない」

 律も紬も唯も知っていたようだ。
 決してレベルが低い訳ではないが、この学校とか比べ物にならない位に差があるのは事実であった。
 その様子に歩は苦笑する。
 
 月臣学園を歩が選んだのは、ただ自宅から一番近い学校がそこだったからだ。
 当時は兄である清隆が失踪し、初恋の人であり兄の妻であったまどかの事が心配であった歩は、彼女の面倒を見ていた。当時のまどかは、1人では食事どこか用も足せないほどボロボロであったのだ。
 故に歩は自宅から一番近い学校を選んだのだが、彼は特に受験でも苦労してないので月臣学園に対して特に感慨もなければ拘りもない。

 また月臣学園は、悪魔であるヤイバの子供たち、ブレードチルドレンを監視するための鳥籠である。
 ある者は自然と入学し、ある者は学園から誘われ、ある者は全てを知らされ半ば強制的に、そうして集められたのが、月臣学園とその上層部である『ウオッチャー』と呼ばれる観察者たちだ。

 それを事実として並べると、とてもじゃないが憧れや尊敬など持てやしない。
 もちろん、それを彼女たちに教えるつもりもないが。

「ほぇ~~~。でもこれで安心だなぁ」
「何がだ?」

 突然、へにゃっと蕩けた唯に歩は問うと、彼女は、

「だって宿題忘れたり~、分からないところがあったら教えてもらえるもん」
「・・・・・・別に教えるのは構わんが、ちゃんと自分でもやれよ」
「やった~~~! ありがと~~~!」

 基本的に歩はお人よしの性格であった。
 そんな2人の遣り取りに、皆は困ったように笑った。

 しばらくお茶をしてのんびりしていると、歩は聞こうと思っていた事を思い出した。

「ああ、そういえば皆に聴こうと思っていたことがあったんだ」
「何だ?」
「なんですか?」

 小首をかしげて尋ねる澪と梓。

「規模事態はそう大きくはないんだが、ライブに参加できるんだ。どうする?」
「・・・・・・・・・・・・へ?」

 シーンとなる音楽室。

「やっほ~~~」

 と、部室に入ってくる山中さわ子先生の声がして、その直後。

「「「「「えええええええええええええええええええええ!?」」」」」
「え? なになに!?」

 びっくりしているさわ子先生を無視して、皆は騒ぎ出した。
 普段はおしとやかな紬や、歩の前では少しおしとやかで若干猫を被っていた澪も、素に戻って肩を掴み、ガクガクと揺すっている。

「ライブ!? どこの!? なんの!? 何時の間に!?」
「出たい出たい出たいです!」
「私も出たいです!」
「私もついにライブデビューか!」
「ライブ・・・・・・フフフ・・・・・・エヘヘヘ」

 澪の顔が歩の顔正面にきてばしばし叫んでくる。正直、近い。
 紬や梓が挙手をしてまで参加に賛成し、期待に胸を膨らませる。
 律と唯は・・・・・・何やら想像してて、涎がだらだら零れていた。

 歩は澪に「顔が近い顔が近い」と呟きつつ、何やら妄想している2人にドン引きしつつ答えた。

「日時は11月の半ば。あと一ヶ月後だな。場所は街中のライブハウスだな。秋祭りのコンセプトでやるらしくて、幾つかのグループも参加するようだ。とりあえず今は参加者受付中って感じだが、参加するなら今日中に申し込んでおくぞ」
「「「「「おおおぉ~~~~~」」」」」
「皆~~。なんの話~~?」

 スルーされて泣いているさわ子先生は哀れなり。

「仕事が早い・・・・・・流石、鳴海先輩。頼りになります」
「律とは違う。頼りになるな」
「なんだとぉ~~澪~~~!!」
「良い思い出、作れそう!」
「エヘヘ・・・・・・サインの練習しとかなきゃ」

 過去に2度も前科がある律は信用されていなかった。これでも部長である。
 歩は良し、と頷く。彼は紅茶を飲み干すと、さわ子へと席を替わり、紬のキーボード前に立った。

「あ、弾くんですか?」
「ああ。あんた達の演奏見て、弾きたいと素直に思えるようになったんだ」
「はあ・・・・・・?」

 意味が分からない、という梓は不思議そうな顔をする。
 皆のライブへの興奮が冷め止まぬ中、歩はキーボードへ手を乗せて手を滑らせた。



 フランツ・リスト作曲 オリジナル曲目

 『超絶技巧練習曲』

 その名の通り、非常に高度な演奏技巧を要するが、決して何から何まで超絶技巧の会得を目的としたわけではない。だが、プロのピアニストですら、この曲はミスせずに弾き切るのは難しいのだ。
 素人でも、この曲を聴けばとてつもなく難しい曲だというのが察せる。

「うわ・・・・・・っ」
「うまっ」
「すげぇえええええ」
「ふわああああああああああ」
「・・・・・・・・・・・・」

 背筋が怖気立つように鳥肌が立った。
 才能?
 確かにそれもあるだろう。
 だがこれは、それだけでは片付けられない。
 文字通りの練習量と努力の賜物、そう感じた。

『―――練習量は平均20時間―――』

 不意にその言葉を思い出し、そして世に認められた人、という肩書きが浮かぶ。
 ゴクリと、唾を飲んだ。
 自分達の目標は、武道館。それは世に認められなければならない。
 
 思わず、尻込みしそうになった。 

 歩が弾き終わると、彼はこう言った。

「ライブの日までは、全員必死に練習だな」
「「「「「うっ」」」」」

 練習好きな梓も、汗を掻きつつ嫌な予感がしたのであった。
 そんな彼女たちを、さわ子先生は口元を緩ませて見詰めていた。
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第4曲 放課後ティータイム 
2010 / 06 / 11 ( Fri )  21:54








「あ~~、鳴海歩です」
「「「おお~~~~」」」

 軽音部活動場所に、男の声と少女たちの歓迎する声と拍手が響き渡った。





 好奇心に溢れる少女たちの目が、歩に居た堪れない空気に浸らせる。
 何ていうか、無垢な少女たち、というのが歩の第一印象であった。
 
 田井中律という少女に誘われ、放課後しぶしぶ軽音部の部室へと向かった。
 以前に案内してくれた真鍋和の言葉を思い出し、部室前へとくるが、音が全く聞こえない。

(練習をしてるんじゃないのか? なぜ何も聞こえない・・・・・・しかも僅かに紅茶や茶菓子の匂い

が・・・・・・)

 既に自分の頭の中には答えが出ているのに、その『普通』とは違う答えをただ認めたくないだけだ。

(まさかな・・・・・・そんなことある訳が。そもそも高校の部活動だぞ。そんな部費がすぐに底が着

く様なことをやってる訳ない――――)

 そうやって否定し続けて扉をあけると、そこには『紅茶を飲みながらケーキを食べる女子生徒6人の姿』があったのだった。

(まさか本当にやっていたとは・・・・・・)

 頭痛を堪えながら自己紹介すると、ホワホワした女の子と低学年と思しき女の子、そして自分を誘った張本人の田井中律の3名が拍手をしながら歓声を上げた。

「よろしくね~、鳴海君。あたし、平沢唯だよ~~。この子はギー太っていうんだ~」
「よろしくお願いします、鳴海先輩。中野梓です」
「じゃあ、私ももう一度。田井中律、よろしく」
「私は同じクラスだから・・・・・・問題ないよね?」
「琴吹・・・・・・紬、です」

 ギターを抱えながら嬉しそうに言う唯や、礼儀正しくペコリと頭を下げる梓。
 ひらひらと手を振りながら挨拶する律。何故か恥ずかしそうにしている澪。
 そして、少し挙動不審のような、どこか緊張する態度をみせる紬。

 紬に対して怪訝な表情を浮かべながらも、歩はもう一度よろしく頼む、と言う。
 歩は改めて部室を見回す。

(何故音楽室にティーセット一式なんかあるんだ。完全に私室と化してるな)

 良い意味でも悪い意味でも、温かい空気がある場所だ。
 そこでふと一角に目が止まる。

「目標は武道館・・・・・・か」
「アハハハハ、まあ、夢っていうか、そんな感じ」

 テレくさそうにいう律に、歩はふ~んと頷く。

「じゃあ、どんな演奏なのか、聞かせてもらっていいか?」

 歩はどんな曲があるのか聞いてみたのだが、神に競り勝った頭脳を持つ歩ですら、予想外の言葉が唯から紡がれた。

「まずはお茶だよ?」
「・・・・・・・・・・・・は?」

 渋みが漂う紅茶。
 ストーレートティーを丁寧に注ぎ、上品な菓子を御茶請けに席に座って、和気藹々とした一時を過ごす少女5人。
 若干1人、不満そうな顔の後輩がいるが、それでも仕方がないなぁと諦念の表情だ。

 歩も用意された紅茶を一舐めし、そして改めて突っ込んだ。
 
「いや、ちょっと待て。なんで軽音部なのに、部活動中に紅茶を飲んでるんだ」
「え? いつもの事だし」
「むぎちゃんがね、いつもお菓子を持ってきてくれるんだよ~」
「まあ、これが私達なんだ、鳴海君」
「ちょっと変わってると思いますけど、いつもの事なんですよ、鳴海さん」
「鳴海先輩が来た事で少しは真面目いやると思ったのに・・・・・・・・・・・・はぁ」

 変わってるなと歩は呟いて、再びティーセットを手にとる。
 そんな歩に、律が名案を思いついたといわんばかりに手を叩き、彼に提案した。

「そうだ! 私達の演奏、見てもらえばいいんじゃないか? 初演奏の時とか新歓の時とかのさ


「あ、それいいねぇ~~~」

 律のアイディアに唯が賛同する。
 しかしそれに大反対する人がいた。

「私は反対だ!」
「え~~~、なんでだよ~~~澪~~~~」
「当たり前だろ!! あんなのを男の子に、鳴海君に見られたら・・・・・・私は本当にお嫁に行けない!」
「?」

 澪が顔を真っ赤にして反対するので、歩は不思議そうに首をかしげた。
 何か大きなミスをしたみたいだが、それだけで嫁に行けないとかどういうことだろうか。

 しかし律は素早くディスクを取り出してデッキに入れた。

「まぁまぁ。という訳で再生~~~~」
「やめろ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
「澪ちゃん、落ち着いて。落ち着いて」 

 澪を抑えるように紬が「まあまあまあまあまあまあ」と言いつつ押しとどめる。
 微妙にノリが良い紬である。
 あずさは苦笑いしつつ、傍観者である事をを決めたようだ。

「ほぅ・・・・・・・・・・・・」

 再生される映像。
 最初はあずさが居らず、4人で演奏している。
 次々と流れる映像。

 澪が騒ぐ理由であった問題のシーンも、歩は顔色を変えずにモニターを見ていた。
 ・・・・・・・・・澪は顔を真っ赤にし、部室の隅で真っ白に燃え尽きていたが。

 そして再び新しい映像に切り替わり、新曲もいくつか増えて再度演奏が始まる。
 服装がころころと変わるのも、一つのエンターテイメントか。
 ピアニストは、基本的に男はタキシード。女性はドレスと決まっている。
 こういったのも新鮮で中々良いものだ。

 再び新しい映像に切り替わり、あずさも加入していた。
 だが今度は唯がいない。変わりに教師らしき人物が唯のポジジョンに居て演奏していた。
 演奏の終盤、唯が加入して再び演奏が始まる。

 その時、歩の目が細く鋭くなる。
 その反応を、澪を除く皆が気付いて不安そうな顔をする。

 放課後ティータイム。
 彼女達の唯一の欠点は、現時点で女性の感想しか知らないということ。
 男性の感想を聞くのは初めてであるし、何よりも鳴海歩は楽器の違いはあれど『音楽において

世界に認められた一級の才能の人物』だ。
 
 そこら辺にいる多少演奏するのが上手い人や、知人友人に評価されるのとは訳が違う。
 かつてない程の緊張感が彼女達を襲っていた。

「・・・・・・・・・・・・」

 映像が終わり、歩はディスクを閉まって電源を切る。
 緊張するあずさへディスクを渡し、席に座る。紅茶を一口飲み、そして口を開いた。

「楽しませてもらった。ありがとう」

 その言葉に、満面の笑みを浮かべる唯と律とあずさ。
 紬はホッと溜め息を吐き、澪がようやく真っ白の状態から復活した。

「よ、よかったぁ。酷評されたらと思って怖かったの」
「全くだな。よかった」
「いえ~~~~い!」
「安心しました」
「良かったよぉ、良かったねギー太!」

 だがここで、紬だけは誤魔化されなかった。
 彼女は歩の最初の言葉が貶す言葉ではなかった事に対して安心したのであって、歩が曲に対して感想を言った訳ではないと気付いていたからだ。

「それで鳴海さん・・・・・・貴方はどう思ったのですか? 私達の映像を見て」
「え?」
「むぎちゃん?」

 澪と唯がその言葉に驚き止まる。あずさもそこで気付いて固まった。
 歩は紬をちらりと見遣り、ゆっくりと言った。

「俺は元ピアニストであって、J-POPなどの演奏に対しての専門的知識はない。だからその上で評価になるが・・・・・・それでもいいか?」
「ええ。貴方の率直な感想が聞きたいの」
「そうだな・・・・・・皆の武道館ライブが最終目標だとして、それが叶うかどうか、だとしたら可能性はあると思う」
「本当!?」
「本当ですか!?」

 歩の言葉に唯とあずさが声を上げる。歩はコクリと頷いて腕を組んだ。

「ああ。まずは武道館ライブが出来るようになるには、昨今のTVなどで見かける音楽アーティ

ストになる必要があるだろう。方法云々は置いておいて、それに対して重要なのは、オーディエンスだ」
「オーディエンス?」
「ああ。つまり聞き手。皆のオリジナルの曲を大衆が『聞きたい』『あのバンドは好きだ』と思わなくてはならない。そう思う人が多ければ多いほど、人気があるという事。つまりライブの夢が叶うということだ」
「なるほど~~」
「そこに音楽の技術はさして重要なファクターではないだろう。もちろん技術があった方が良い

演奏が出来るし蔑ろにすべきではないが、ソレが合っても受け入れられなければ同じこと。そしてそれは全国にいる数多のバンドグループがそれに当て嵌まり、メジャーデビューなど夢のまた夢として、夢に破れて一般人へと成り下がる」

 歩の言葉にゴクリと喉がなった。
 微妙に話が重い。不吉な言葉が続いて気が重くなる。
 だがそんな彼女たちの心配は杞憂だった。

「そして俺はあんた達の演奏を聴いて、ライブ技術などは分からないが、少なくても『また聴きたい曲だ』と思ったのは事実だ。そしてそれは大きな武器であり、貴重な才能だ」
「おおおおおおおお!!」
「まあ、ピアニストの立場から言わせてもらえば、もう少しあんた達は技術向上と音合わせが必要だとは思うが。音楽に慣れてる奴なら誰でも気付くくらいに合ってない箇所がいくつもあった」
「ガーーーン」

 いちいち一喜一憂する律。
 そんな彼女へ苦笑しつつも歩は肩を竦めて言った。

「だが言っただろ? 一番大事な『また聞きたい』と思わせる才能が、あんた達にはあると。まだまだ未熟だと思うが、少なくても俺は楽しめた。だから楽しかったと言ったんだ」
「そう・・・・・・よかったぁ」

 紬の眉毛がへにょっと垂れて、嬉し気に微笑みが浮かぶ。
 そんな彼女の顔を見て、歩は小さく笑った。
 なるほど、類は友を呼ぶらしい。どの少女たちも自分達の演奏を褒められたことよりも、仲間の演奏が貶されなかった事に対して喜んでいる。
 
 昔の自分は、他人に気遣っている余裕などなかった。
 とにかく自分の存在意義を立てる事に必死で、そして敗北して全てから逃げ出したのだ。

 だから眩しくもあり、同時に羨ましくも思う。

「まあ、軽音楽がピアノと違うのも僥倖だったな」
「え? どういうこと、鳴海君」
「それはな、秋山。まずピアノは正確に弾く事が求められる。日本のコンクールはそれが顕著なんだが、一箇所でもキーを押し間違えたりしたら、それだけでも減点される。そして世界へと出ると、正確性の上に『自分性』が求められるんだ。またそれだけではない。曲に対しての『自分なりの解釈を曲へと反映させる』事、その上で15分以上、連続で3曲以上弾き続けなくてはならない。だから世界はもちろんの事、国内でも上位のコンクールなどでは、出場者は皆、平均20時間の練習時間を費やしている」
「20時間!?」
「20って、寝る間も惜しむって奴ですね・・・・・・」
「ああ。即ち練習嫌いにはこなせないし、それはこの軽音部には合ってないだろう。音楽性も違うしな」

 そう。それは歩が映像を見て感じたことだった。
 まず何よりも、このメンバーが実に楽しそうに演奏をすることが目に映った。オリジナルの曲もその性質が実に反映されていて、それが欠けては曲の意味が失われる。
 それがチラリと見えたのは、平沢唯が序盤欠けていた演奏だった。
 明らかな精彩が欠けていた。曲もまったくノレていなかった。
 そして平沢唯が登場してからの演奏は『自分性』が良く出ていた。これは大きな武器であり、大衆に受け入れられれば、将来的にはその夢は不可能ではないだろう。
 当然だが、今のままでは無理だし、望みは薄い。
 だがその夢に必要な大前提となるものを、根底で持っているのは間違いないだろう。

「うひゃ~~~~、私には無理だ。そんなに練習してたら気が狂っちゃうよ」
「ほえええええ。すごいねぇ澪ちゃん」
「それが世界を狙う人たちの努力なんだろうな。私達のは幸い、コンクールはないからな」
「でもでも。私達もそれくらい練習する気概は必要かと思います」

 関心する一同。
 あずさはムンっと気合を入れていて、小さな身体にはギャップが合って微笑ましい。

(皆、仲が良い。そしてその上で限りない可能性があって、限りない夢と希望に溢れている。ああ・・・・・・やっぱり俺は・・・・・・)

 そんな一同を見ていた歩は、1年前とは考えられないほど穏やかで優しい顔をしている。
 澪はその表情に気付き、焦燥感に刈られた。

(なんだ、その顔・・・・・・なんでそんな今にも消えちゃいそうな顔を・・・・・・)

 胸が急に締め付けられる。

 そう。
 実際に歩が浮かべている顔は、かつて相棒であった少女と別れた直後のような、そして自分の

出生すら否定して土屋キリエに戦いを宣言した時のような、そんな危うい気配すら漂う顔をしていた。

「なあ、鳴海君!」
「! ・・・・・・ああ、どうしたんだ、秋山」
「やっぱり軽音部に入らないか? マネージャーとしてでもいいし、こうしてアドバイスを送るコーチでもいい。たまに来るだけでもいいから!」

 澪の気迫が籠もった言葉に、お喋りをしていた唯たちもびっくりして止まり、澪を凝視する。

「ダメ、かな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 小さく小首を傾げ、少し目が潤んだその瞳。
 真剣な眼差しに、歩は少し逡巡した。

(・・・・・・正直いって、こいつらの演奏は大したことないと思っていた。
 だが、予想以上のものだったのは事実だ。
 また聞きたいと・・・・・・そして何より、

 ――――――自分も演奏したいと)

 え?
 弾く事に意味などないのに?

 時間が無いのにも関わらず、この軽音部に時間をかけるというのだろうか。
 いや、この気持ちが沸き起こったのはきっかけは、否定の仕様が無い彼女達の――――。




「――――――――――――ああ。これからよろしく頼む」 
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第3曲  軽音部への誘い 
2010 / 06 / 11 ( Fri )  21:51







「軽音部に入らないか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・は?」


 歩の目の前で大きな声を張り上げる、前髪を持ち上げた特徴的な女の子が、朝っぱらから叫んだのだった。
 歩はポカーンと、口を半開きにして呆けた。




 鳴海歩が桜ヶ丘学園に編入して2日目。
 微妙に気が重い歩。女子高というだけで気が滅入りそうになるのだが、昨日の初日からピアノという腕前を自分の気が向くままに弾いてしまうという失態を犯してしまった。

 あれから、演奏を終えると歩の耳に飛び込んできたのは、無数の拍手と黄色い歓声だった。
 感情に流されるまま弾いていた歩は呆然とし、勧誘を薦めて来る音楽教師や吹奏楽部の生徒達から逃げるように下校した。

 これから何が起こるのか、考えただけで欝になりそうであった。

「ったく・・・・・・浅月のやつ、派手に笑いやがって」

 スーツのネクタイを締めなおしつつ毒吐く。
 それは昨夜の出来事であった。



 歩が帰宅し、まどかと清隆と一緒に夕飯を摂っていると、そこに連絡が入った。
 その人物こそ浅月香介。
 悪魔『水城ヤイバ』の血を引き、現在において生存中の25名のブレードチルドレンの中で最も早く生まれた男。
 何度も歩の命を狙い、戦い、されど共闘した、ある意味で歩の唯一の男友達といえる人間だった。

「おい、鳴海弟! お前、女子高に入ったらしいな! ぶっはっはっはっはっはゲホッ・・・! ゲホッガホッ!」
「・・・・・・・・・咽るほど笑うなよ」
「い、いやだって! お前が女子高! 女子っ・・・・・・! そりゃ確かに地獄だ!」
「・・・・・・・・・・・・」

 余りの爆笑に電話口から声が漏れ、まどかや清隆が目を丸くしていた。
 歩は半目で電話の向こうの主を睨んでいた。
 まあ、その後に向こうで突然起こった打撃音と共にうめき声が聞こえ、高町亮子が電話に出てきて歩を労ってくれた。

 微妙に聞こえるうめき声に汗を流しながらも亮子と軽く雑談とアドバイスを受け、そして切った。
 浅月の爆笑に、歩が殺意という名のヤイバの呪いに目覚めそうになったのは、勘違いではないはずだ。 



 そうして、登校しながらぶつぶつと脳内で文句を吐きつつ、教室に入った。
 どうやら昨日のことは既に噂になっているようで、どこからか歩が昔は日本を代表するピアニストであり、ピアノ界の生ける神話・天才ピアニストの鳴海清隆の弟である事がバレたらしい。

 今の時代、PCさえあれば公的に登録されたことが過去にあればすぐに調べがつく。
 おそらくそこから調べたのだろうと、歩は予測を着ける。

 だが実はもう少し事態は複雑だった。
 それは軽音部の紬が歩について喋っていた時、その会話を数名が盗み聞きして、そこから漏れてしまったのだ。
 だが歩にそれを知る由も無い。

 鞄を片付けてネクタイを緩め、外をボーっと眺める。
 無数の視線を無視しつつ手元に楽譜を取出して、自分のオリジナルの楽曲を書き出す。
 複雑な音符を書き連ね、頭の中でその音を再現しているのか、僅かに頭が揺れ動く。

 その時、HR前にも関わらず誰かが教室に入ってきた。
 勢いよく扉を開け、ズカズカと足音を立てる。前髪を上げた、少しヤンキーに見えなくもない、どことなくだらしない

 制服の着こなし。だが快活な印象を受けなくも無い少女。
 その少女は鳴海歩の前で立ち止まった。
 歩もそこでようやく気づき、顔をあげて少女を見た。

「鳴海、歩・・・・・・くん、だよね?」
「ああ」
「・・・・・・・・・・・・律?」

 視界の隅で、黒髪の女の子と真鍋和が声を洩らしたのを聞いた。
 律と呼ばれた少女は、その声を無視して歩を見詰めて言った。

「突然だけど」
「?」
「軽音部に入らないか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 シーンと教室が静まり返り、爆弾投下の犯人だけが目を爛々と輝かせて歩を見詰めていた。
 歩はその言葉の意味を噛み締め「あ~~」と唸って答えた。

「俺は元ピアニストであって、バンドマンの経験はないんだが」
「構わない! っていうかこっちの才能もきっとあるって!」
「いや・・・・・・その根拠はいったい」
「どうだ!? 軽音部には可愛い子も多いぞ~!? きっとウハウハだぞ~~!! なんていったってファンクラブすらある澪

も゛っ!?」

 ゴスっと、鈍い音が響いて頭部から煙を出しながら崩れ落ちる女生徒。
 その背後には、荒い息を吐きながら拳骨ポーズを取っている女の子がいた。その子はクラスメイトの1人だった。

「何を勝手なことを言ってる! 鳴海君に迷惑だろ、律!! というか最後なにを言おうとした!?」
「・・・・・・・・・・・・(返事がない、ただの屍のようだ)」
「だ、大丈夫か?」

 一瞬、目の前で倒れる少女が浅月香介と被ったのは笑えたが、歩は冷や汗を流しながら殴った人物を見た。

「ごめんね、鳴海君。ウチの部長が勝手なこと言って」
「ウチのって・・・・・・ああ、君が真鍋さんが言ってた軽音部の秋山さんか」
「え、うん」
「・・・・・・・・・・・・ってぇ~~~~、酷いじゃんか澪~。たんこぶできたぞ~」
「律が私を生贄にしようとしたからだろ!」
「そこは、ほら。幼馴染のよしみでさ」
「意味が分からんわ!」

 と、歩を置いて漫才を繰り広げる2人。
 歩はぼりぼりと頭を掻いて、殴られた少女に言った。

「あ~~~、とりあえず悪いんだが、俺は軽音部には・・・・・・」
「じゃあ、やっぱり吹奏楽部!? やっぱりそうなのか~~~」
「!!」

 律の吹奏楽部という言葉に、クラスの数名が反応していた。その子たちは吹奏楽部の部員であった。
 彼女たちは歩を部に誘おうと思っていたのだ。律の言葉に内心で大慌てだったのだが、そこに期待の光が舞い込んだ。
 だが、そんな彼女達の期待を歩は木っ端微塵に壊した。

「いや、吹奏楽部にも入らないが」
「え、じゃあ何にするの? それとも入らないで帰宅部?」

 落ち込む吹奏楽部員たちに気づかず、歩は澪の問いに答えた。

「まあ、帰宅部だろう」
「そっか・・・・・・じゃあ、さ。一度だけでいいから私達の演奏、聴いて貰えないかな?」
「演奏を?」
「うん。鳴海君のような才能を持った人に、一度私達の演奏を聞いてもらいたいんだ。で、どう思うか知りたいんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「ダメ、かな?」

 かなり恥ずかしい言葉を口にした澪は、既に顔が真っ赤だ。
 元々が内気な性格の澪だったが、彼女がここまではっきりと言えたのも理由があった。
 澪は昨日の歩の演奏で、どうしても卓越した才能の人物による、自分達の評価が気になった。
 負けたくないという生来の性格と、今後の軽音部のため、武道館ライブへの道のため、『必要』だと思ったのだ。

「・・・・・・・・・・・・分かった。招待に預かろう」
「うおっしゃ~! じゃあ放課後な!」
「復活はやっ!? おい、律!」

 倒れていた律がすぐに立ち上がって、勢い良く飛び出していく。
 歩はその様子を見て、傍にいる澪を見た。

 なるほど、と思う。
 黒髪で長いストレートの髪、整った顔、可愛らしい瞳。容姿に優れた子であった。
 指を見ると、女性の中でも珍しいほど大きな手。いや、長い指であった。
 長くて細い指というのは、ピアニストにとっては優れた才能、優れた演奏をするための一つの武器だ。
 秋山澪が楽器の何を担当しているか分からないが、それでもその指の長さだけでも優れた武器を持っているのが分かる。 

 少しだけ、少しだけだが。
 その容姿が、義姉のまどかに重なって見えた。
 そして『結崎ひよの』という、偽名のパートナーを彷彿させた。
 彼女が良く言っていた言葉を思い出す。


『企業秘密です♪』

 時々、云われた事を思い出す。

『鳴海さんは、もっと自分のために色んなことをするべきです! お兄さんのことばかり比べたりせずに!』

 最後の言葉を想い出す。 

『また、会いましょう』

 
 歩は思う。
 たまには、自分の延命のことやブレードチルドレンの呪いの事ばかり考えず、ムダと思えることをするのもいいだろう。

 彼女達の軽音部、引いては演奏が、ムダなことだと思っていた。
 それが、現時点で思っていたことだった。
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第2曲 軽音とピアノ 
2010 / 06 / 11 ( Fri )  21:46








「はぁ・・・・・・」

 小さな、けれど確かに重たい溜め息が、真っ青な天空へと消えていった。



 鳴海歩の転入、それはやはり当然ながら一大センセーションだったようで、女子生徒ばかりであった女の子たちは興味心全開で歩を見てきた。
 最初の自己紹介に始まり、休憩時間の絶えず会話を持ちかけてくるクラスの面々。また廊下からは学年を問わず歩を見にやってくるのだ。

 歩自身、この経験は初めてではない。
 1年前の件で、歩は後ろ向きな人間から少しは前向きへと変わり、クラスメイトたちとも交流をまともに行うようになった。その結果、元々『神の弟』として類稀な才能の持ち主であった歩と『悪魔の弟』であったヒズミは、学年を問わず人気者になった。
 当然のことながら告白も頻繁に起こり、2人はどこに行っても視線を集めていたものだ。

 だがやはり新天地で、しかも女子高でのソレはやはり辛い。
 気疲れというべきか。学力に関しては全く問題なく、挨拶を交わした理事長や教師たちとも問題なく進んだはずだ。

(ったく・・・・・・どうせ後数年の命だっていうのに、なんで今更こんな苦労をしなきゃいけないんだか)

 少々投げやりな言葉を吐いてしまっても仕方ないだろう。

 昼休憩くらいはゆっくりしたいと思い、屋上に弁当を持って出てきて秋空の下で休んでいた。
 今日作った弁当は、珍しく歩ではなく、義姉であるまどかが作ったものだ。料理は決して上手くないまどかだが、流石に歩を気の毒に思ったのか、がんばって早起きして作ったらしい。
 まどかへ少し前まで恋心を抱いていた歩としては、有り難く受け取ってきた。
 焦げた玉子焼きやごぼうの肉巻きや野菜炒めも、味が濃かったり薄かったりするが、やはり胸に来る美味しさがある。

「・・・・・・・・・・・・」

 手すりから校舎を見下ろすと、あちこちで女生徒たちが談笑したり、遊んだりしている光景が目に入ってくる。とても楽しそうで、笑顔は輝いていて、明日への希望を胸に今を生きている。
 
 ふととある教室に目を向けると、そこには机に座って幾人かで談笑している子たちが目に入った。
  
 彼女たちは椅子に座って何かを話している。そこは普通であったが、時々、赤み掛かった茶髪の子がギターを持って何やら演奏ポーズをとったり、隣の子がドラムを叩く仕草を見せたりしていた。

「・・・・・・バンド、か? いや、学校という枠組みを考えると軽音楽、か」

 何やら楽しそうにティーカップをもって楽しそうに談笑する彼女達。
 それを見て歩は堪らなり、逃げるように食べ終わった弁当を持って屋上を後にした。





「鳴海君、遅くなったけど、学校の案内をしたいんだけどどうかな?」
「ああ、助かる。ありがとう。ああ~~っと・・・・・・・・・・・・」
「真鍋(まなべ) 和(のどか)です。先生から鳴海君の案内を任されました。一応、生徒会にも入ってます」
「そうか、よろしく頼む」

 一日を終え、終礼も終わった頃、クラスでも担任の信用が厚い女子生徒が1人歩の下にやってきた。
 同じクラスメイトとなるのだから、歩も無碍に断るようなことはしない。

 ・・・・・・・・・・・・昔なら問答無用で即座に断っていただろうが。

 2-1の教室から廊下に出て、それぞれのクラスの位置。そして移動教室となる理科室や実験室、家庭科室、事務室、体育館と紹介される。

「なんだか紹介する必要ないみたいね。大体の位置はこの時間までに覚えてたんじゃない?」
「まあ、そうかもな。一度通れば大体は覚える。だが細かな場所までは流石にな。だから助かった」
「なら良かったかな。あ、ここは生徒会室ね。困ったことがあったらここに来て。私はだいたいここにいるから」
「ああ、わかった」
「そういえば、鳴海君は部活はどうなるの? やはり女生徒ばかりだから難しいの?」
「・・・・・・まだ決めてないし、聞いてもないな。だが・・・・・・」

 部活をやっても仕様がないしな、という言葉は飲み込んだ。自分はこれからできるだけ長生きしなくてはならないのだ。ブレードチルドレンの面々のために。彼らの希望となるために。
 しかし、どうしても恐怖と孤独から投げやりになりそうになる。何より、自分の隣にとある人物が今はもういないのだから。

 一通り回って戻ってくると、のどかはそこで重要なことに気づいたように階段のところで立ち止まった。
 歩は怪訝そうに尋ねる。

「どうした?」
「あ、うん。この上にも音楽室があるんだけど、そこには私の幼馴染がいるんだ」
「ほぅ・・・・・・」

 歩の頭の中で即座に学校の見取り図が展開され、屋上でみた時のギターの連中のことだと察する。

「その子、軽音楽部なんだけどね」
「軽音楽部か」
「うん。とっても上手いんだよ。軽音部の演奏、うちの学校の皆も好きみたいだし」
「そうか」
「ああ、ウチのクラスの子で秋山澪って子がいるんだけど、その子も軽音部だよ」
「ふ~ん」

 のどかの声が少し優しくなっていることに気づき、その幼馴染と本当に仲が良いんだろうなと思う。
 そういえば幼馴染なんていないな、と歩自身に気づき、少し残念に思う。
 あのブレードチルドレンの面々は、基本的に幼いころから銃弾と爆弾の嵐の中、共に戦ってきたので幼馴染というのが当たり前だ。
 特にメガネの男と元気はつらつな陸上娘の関係が顕著か、と呟く。

「じゃあ、こんなところかな」
「ああ、ありがとう。この礼は必ずする」
「いいって。私も先生に頼まれたことだし、それにクラスメイトでしょ?」
「そうか。ありがとう」
「じゃ、また明日ね」
「ああ」

 そういってのどかは教室へと戻っていった。
 それから歩は廊下をゆっくりと歩く。チラチラとこちらを伺いながら通り過ぎていく女子生徒を無視し、ゆっくりと廊下を歩く。
 1階の職員室前の多目的ホールにやってきた。
 基本的に、多目的ホールはイベント時の使用以外には使うことはない。
 だがそこにはイベントのためにピアノがおいてあることが多い。

 この学校も例外に漏れなかったようで、オルガンピアノが置いてあった。
 さすがにグランドピアノは音楽室か、と呟く。この時間なら吹奏楽部が使っているから無理だろうなとあたりを付け、そのピアノの前に行く。


 正直、苦痛だった。


 この平穏が。
 この温もりが。
 時間がない自分の状況が。
 未来がある同世代の連中が。

 
 兄である神に勝利した時に歩が払った代償は、今後1人で生きていくこと、幸せそうに見られず、孤独の位置にいて、されど笑っていること、その最後のときまで希望を繋いでいくことだった。

 だが。

 やはり1人になったとき、死の重圧は大きい。

 せっかく己というものを取り戻し、生まれたときからのプレッシャーである兄に勝利したというのに。納得してソレを選んだはずだったのに。

 このまま死亡するのが、怖い。

「・・・・・・・・・・・・っ」

 椅子に座ってしがみつくように鍵盤に手を置き、激情が溢れるまま、指を滑らした。

 その曲は、カノン・ヒルベルトの月読学園占領事件の時にも弾いた曲。



 フランツ・リスト作曲 

 詩的で宗教的な調べ 第3番

 ――――孤独の中の神の祝福――――




 その曲は、事件の時のように学校の敷地中に響き渡った。
 寒気のするような音と、急かされるような、心が締め付けられるような音を奏でた。











「ほえ・・・・・・・・・・・・?」
「んあ? なんか音が聞こえないか?」
「これはピアノ、か?」
「どうしてピアノの音が聞こえるんでしょう。ここら辺にはピアノなんて無いのに・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

 軽音楽部―――放課後ティータイムのメンバーは、まったりとシュークリームと紅茶を楽しんでいた。
 学園祭も無事成功し、唯の体調も完全に治って、これからメンバーで『目指せ武道館』を目標にがんばっていこう、そう指針を立てた今日。
 でもやっぱりこの部特有の放課後のティータイムをみんなで満喫していた。

 そんな時だった。

 どこからかピアノの音が聞こえてきたのは。
 初めは小さかったが、序所に聞こえてくるメロディは、今ははっきりと聞こえる。

「うわ・・・・・・なに、この音。なんかこう、鳥肌が立ったし」

 律が両腕を擦る仕草をみせる。
 その意見に同意なのか、唯も梓も澪も頷く。

「これ、スピーカーにでも差して音出してるのかな?」
 
 唯の最もな疑問に、澪が答える。

「ピアノでスピーカーなんか聞いたことないけど・・・・・・それに可能なのか? それって」
「さあ」
「あ、そうだ。むぎなら分かるんじゃないか?」
「そうですね、むぎ先輩は元々ピアノをやってたんですよね」

 ポンと手を合わせる梓。
 律も頷いて紬へと振る。全員の視線がむぎへと集まる中、紬の視線はどこか虚空を彷徨っている。
 その様子に皆が首を傾げる。
 すると紬は、ゆっくりと立ち上がり、ふらふらと廊下へと出て行く。

「おい、むぎ!?」
「むぎちゃん!?」

 夢遊病患者のように出て行った紬に、皆が驚いて慌てて追いかけた。
 廊下に出ると音は顕著に聞こえ、その旋律に寒気がする。

「どうしたんだろ、むぎちゃん」
「心配ですね・・・・・・」

 唯が潤んだ瞳で前で歩くむぎを心配する。こんな変な紬に梓も唯に同意のようで、心配そうにしている。

「このピアノの音が聞こえてからだな、むぎがおかしくなったのは」
「そうだなぁ。例えばこれを弾いてるやつと何かあったとか、実は昔に生き別れた妹とか!」
「嘘をでっちあげるな!」

 澪が推測したことに対し、律が少しからかい気味に冗談を言う。
 即座につっこむのは流石は幼馴染というところか。

 そんな漫才を繰り広げながらも皆は心配して付いていった。
 すると紬はとある場所で足を止めた。

 そこは多目的ホール。

 その場所には、放課後にも関わらずに大勢の人間が集まっていて、1人の人物を中心に集まっていた。
 吹奏楽部などの文化部以外にも運動部の姿も見える。
 皆が音に釣られて様子を見に来たという感じだ。

 そこで唯たちはこの曲を誰が弾いてるか知った。

「アレって、もしかして今日転入してきたっていう男の子じゃない? みおちゃんのクラスに来たんでしょ?」
「あ、ああ。鳴海君だったな。鳴海、歩っていったかな」
「すっげ~~~~、めちゃ上手。なにもんなの?」
「いえ、律先輩。これは上手いどころの話ではないですよ。凄すぎます」

 クラシックについてさっぱり分からない面々なのだが、歩の演奏だけはまったくの別物にしか聞こえなかった。
 ピアノって、こんな音が出せるんだ、と。
 初めて思い知った。

「やっぱり・・・・・・・・・・・・“あの”鳴海歩なんだ・・・・・・」
「むぎ?」

 初めて紬がぽつりと言葉を洩らした。
 その声に、唯たちは耳を澄ます。

「心配かけてごめんなさい、みんな」
「むぎちゃん・・・・・・」
「だけどね、私、どうしても確認したかったの。あの人が、あの鳴海歩本人なのかって」
「あの?」
「私、4歳のころからピアノやってたっていう事は、皆も知ってると思うけど」
「ああ、知ってる知ってる。だからむぎのキーボードは上手いもんな」
「ありがとう。だけど、私の腕では、彼には敵わない。ずっと、ずっと上手いの」
「そんなことはないと思うけど」

 唯は否定した。事実、紬はとても上手かったし、その弾き方やメロディは、彼女の優しさが溢れているからだ。
 だが、そんな気持ちに紬は自嘲気味に笑って否定した。

「ううん、私なんて小さなコンクールで賞をもらえる程度。だけど彼は違うわ」
「むぎ、知り合いなのか? あの、鳴海って奴と」

 よく知っているのよ、と云わんばかりの言葉に、律は問う。
 紬は小さく頷き、曲も残りわずかといわんばかりの時、自分が知りうる限りの鳴海歩について言った。

 この演奏で確信したのだ。

 ありえないほど遠くまでに音を響かせ、聞くものを揺さぶる演奏者の実力。

 それが――――ピアニスト。


「鳴海歩。日本のピアノ界を背負って立つといわれ、その繊細な弾き方、比肩無き才能から世界から称され称えられたわ。

 ―――――天使の指先、って。

 間違いなく、世界を代表するピアニストよ」


「世界を・・・・・・」
「代表する・・・・・・」
「「ピアニスト」」

 ただの学校のバンドだけではない。
 まさに、自分たちの夢、目標である、武道館。
 それに届く実力を持つ、人物。

 そんな人物が、目の前に現れたのだった。








「すごい演奏だったな・・・・・・」

 ポーっと夢見心地で机に向かう澪。手元ではPCをイジっていたのだが、まったく作業は進んでいない。

「むぎの動揺も、今なら分かるな・・・・・・そんな実力の持ち主が現れたら、驚きもするよな」

 紬が一方的に知っている立場だが、当たり前だ。
 なんだか自分達の夢を、リアルに感じて、真剣に考えさせられることになった。
 ひょっとしたら紬は、才能の限界を感じてピアノを止めたのかもしれない。
 それはまったく関係なく、ただ1人のピアノ演奏家として、鳴海歩というピアニストをあこがれていたのかもしれない。

「ピアノという楽器に限らず、ああいった演奏や才能が、世間でも成功するものなんかもしれないな」

 負けたくない、そう澪は思った。
 帰宅の時、唯や律や梓はただ歩の演奏をすごい、上手いと褒めていた。
 澪自身もそう思った。
 だが、一つだけ違った。

「なんか・・・・・・ちょっと悲しく思えたのは、私が変なだけなんだろうか」

 その日。
 確かに運命が変わった気がした。

 良い方へと、変わる気がした。
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けいおん!~スパイラル~ 
2010 / 06 / 11 ( Fri )  21:40
けいおん!とスパイラル~推理の絆~のクロス二次創作です。両原作を知らない方でも分かるように書いて行きますが、それでも知っていた方が楽しめると思います。流血系は有りません。
上記の内容を許容できる方のみ、お読み頂けたらと思います。上記内容に不快な気持ちになられた方は読まずにBACKをお勧めいたします。







「歩、ちょっとこの学校に編入してくれないか?」

 始まりは、清隆のこの一言からだった。
 ブレードチルドレンの事件から始まった騒動は、水城ヒズミの1年間の入院と、鳴海清隆の敗北。
 そして、形ばかりの鳴海歩の勝利で幕を下ろした、その半年後のことだ。

 そもそも『ブレードチルドレン』とは何か?
 この世界には、ある2人の『神』と『悪魔』がいた。

 神のごとき天運と知力とカリスマ性を持ち合わせ、ピアノ界では神話を残して引退、警察庁では名刑事として名を残し、世界の要人たちすら崇拝する男―――鳴海清隆。

 悪魔のごとき天運と知力とカリスマ性。そして殺戮を繰り返し、ゲームを楽しむかのように世界中の人間たちを嘲笑い、誰もがどんな手を使っても殺せなかった男―――水城ヤイバ。

 ブレードチルドレンとは、ヤイバの遺伝子を引き継いで生まれた、兄弟姉妹のことである。

 悪魔は神によって殺されることになったが、悪魔の弟が存在し、またその存在を神は殺すことができなかった。そして神にも弟がいて、両者の弟は殺しあう運命にあると言われていた。

 紆余曲折あり、結果的にブレードチルドレンたちの未来は残された。何人かは取り返しのつかない事態になっているらしいが、それでも未来が残された子供達は今を懸命に生きている。
 また神の弟―――『鳴海歩』は、神のクローン体という特殊な出生であるが故に余命幾ばくもないだろうという事実が発覚してから、日常をゆっくりと過ごしてきた。

 そうは言っても、もちろんの事だが兄・清隆も歩自身も治療を模索してきたのだが。

 そんな、高校2年生へとなったばかりの日曜日、歩は趣味のピアノで優雅な時間を過ごしていると、休日出勤していた兄の清隆と奥さんのまどかが急にやってきた言ったのだった。

「何かあったのか、兄貴?」
「ああ、それがな・・・・・・」

 事情を聞くと、とある女子高が少子化社会に懸念して共学も視野に入れたいらしく、しかし急に共学にするのもどうかという意見もあり、テストケースとして1人の男を入学させることにしたらしい。
 ここで誰になるかというのが問題。

 そして的に上がったのが、文科省や教育委員会の上層部のみが知りうる存在、『神の弟』に白羽の矢が当たったらしい。
 血筋、知能、性格、素行。それらは女子だけという空間に放り込んでも問題を起こさないと、信頼できるものだったらしい。
 当然、清隆も最初は反対しようとしたらしいが、しかし資料を見て思いとどまり、熟考した末に何故か許可したのだ。

「ごめんね、歩。私も清隆さんを説得したんだけど・・・・・・ほら、いつもどおりのノリでね」
「・・・・・・ああ、よく分かったよ義姉さん、その光景が甚だ遺憾だが目に浮かぶさ」
「酷いな、2人とも。私だって最初は反対したさ。だけどこの件は歩にもなにかプラスに得られるものがあるかもしれないと思ったからね」
「そんないい加減な理由で、女子高に入れるな!」
「いや、今回頼んできた人物がな、私にとっても即座に断りを入れ辛い人でな」
「・・・・・・兄貴にそんな人がいるのか? 信じられないんだが」
「いや学生時代にあった人でプライベードで知り合ったんだ。まあ、だから断り辛くてな」
「なるほどな・・・・・・まあ、どうせ俺には断る選択肢は無いんだろうから、別に構わないぞ」
「助かる。悪いな歩」
「1年前の件より悪質なことなんざそう無いからな、別にいいさ」
「それを言わないでくれ」
「でも歩、大変そうだったら、すぐに戻ってきていいからね」
「ありがとう、義姉さん」

 歩は、また面倒なことになりそうだな、と思いながら楽譜にペンを走らせる。
 彼にとっては20歳前後で死ぬと言われていて、更に元から欲というものに乏しい歩は、よからぬ想像など微塵もしないし、期待もしない。ただ淡白なだけだ。
 そこでふと気づく。
 ボールペンを置いて肩を揉み、髪を掻きあげて面倒臭そうに尋ねた。

「で、何ていう高校なんだ?」

 歩の言葉に清隆はネクタイを緩めつつ、資料をひょいっと歩へ放って応えた。

「県立、桜ヶ丘高校だ」




 その日。
 平沢唯は通学路を朝から走っていた。完全に遅刻という訳ではないが、それでもギリギリの時間。
 遅刻の理由が夜遅くまで勉強していたからとか、家庭の事情でとか、それならば同情の余地はあるが、彼女は違った。彼女は昨晩、部屋でギターをジャカジャカと弾いて、奇妙な声を上げながらごろごろと転がっていたからだ。

「お姉ちゃん、皆さんが校門のところにいるよ?」
「ほんとだ! りっちゃ~ん! みおちゃ~ん! むぎちゃ~ん! あずにゃ~ん!」

 妹の憂も姉の遅さに巻き添えを食らったのだが、まったく不満を洩らさず、むしろ姉と一緒に手を繋ぎながら走ることが嬉しいとでもいいたげな表情で走っていた。
 憂の示した先にいたのは、唯が所属する部活動仲間にして親友たちだ。

 ドラムの田井中律。部長にして快活な性格で、少し大雑把な性格をしているが、実は気配り上手な子。
 ベースの秋山澪。クールビューティーな容姿だが怖がりで痛いものが嫌という可愛らしい性格な子。
 キーボードの琴吹紬。とあるグループ企業のお嬢様だが、穏やかで優しい性格の、眉毛が特徴的な子。
 リズムギターの中野梓。皆より1歳下で憂と同年齢。バンド歴は一番長く、真面目な性格の子。

 一同は、遠くから駆け寄ってくる仲良し姉妹の唯と憂に気づき、手を振り返す。
 直接は口に出して言わないが、皆はこの姉妹が好きだった。
 ボケボケした性格でマイペースな姉、そんな姉の正反対の性格でしっかりものの妹の憂。
 お互いがお互いを大好きで、思いやるお互いの言動は、澪たちバンドメンバーは胸がポカポカする気分になる。だから好きだった。

 挨拶を交わし、下駄箱に向かう。

「ねえねえ、むぎちゃん。今日のお菓子はな~に?」
「今日はシュークリームですよ。最近人気のお店のものらしいんです」
「う・・・・・・また太りそうなものを」
「いや、私達も澪、あんたもむしろ痩せすぎだから」
「そうですよ。澪先輩すっごく細いじゃないですか。うらやましいです」

 澪の洩らした言葉に律が即座に突っ込む。毎日、部活の時間にティータイムと称して食べているのだから、何を今更というところではある。
 学校でいいのか、という突っ込みが入りそうだが、担当顧問の教師が率先して食べてるのだから、なんともはやという話である。

 ふと、唯は周囲の喧騒が普段と違っていることに気が付いた。

「ねえねえ、澪ちゃん。なにかあるのかな、今日」
「へ? 唯、あんた知らないの?」
「なにが?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・(ニコニコ)」
「はぁ」

 締りの無い笑みに溜め息を付く澪。
 だが彼女の呆れ具合も最もであった。
 なぜなら、今日の『アレ』については、数日前からクラス中で、学校全体で騒ぎとなった内容なのだから。

「おいおい、唯。先生が言ってただろ?」
「?」
「唯先輩、プリントにも書いてあったじゃないですか」
「? なんのことだっけ?」
「お姉ちゃん。今度ウチの学校が男女共学化にあたってのテストケースとして、男の子が1人通うって話があったじゃない」
「ん? んん~~~~・・・・・・・・・おお! あったあった! 思い出した、ありがとう憂!」
「よかったね、お姉ちゃん!」

 がっくりと肩を落とす澪たち。朝からどっと疲れたようだ。
 むぎはニコニコと微笑んでいるだけだが・・・・・・すこし困ったように眉が下がっているのは気のせいではない。
 まあ、これも唯らしいかな、と思ってしまう一同は、やはり彼女の親友であった。

 すると、背後が急に騒がしくなった。僅かながら女の子の黄色い声がする。

「なになに?」
「お、あれ、男じゃん」

 唯と律が真っ先に反応し、皆が校門へと振り返る。
 すると校門のところには、社会人のように黒のスーツを着込み、ネクタイを締めた1人の男の子が歩いてくるところだった。

 その男の子は、ちょうど唯たちと同じ年齢ぐらいで、長いもみあげに隠れて、特徴的なシルバーピアスが見える。
 信じられないほどカッコイイ容姿の男だが、それよりも特筆すべきはその纏うオーラであった。

 なんというか、神々しいというか、他人を寄せ付けない神聖な雰囲気をかもし出していたのだった。

 その男の子はあらゆる方向から視線を集めながらも気にする様子もなく、マイペースに歩いており、唯たちを抜かして職員室の方へと歩いていった。
 姿が見えなくなると、周囲は一層騒がしくなった。

「うっわ。ちょっと見た? なに、あのイケメン」
「うんうん。見たよりっちゃん! 芸能人かな?」
「違うだろ! というか律も唯も、ジッと見すぎだ」
「でも澪先輩。それも仕方ないですよ」
「まあ、その通りなんだがなぁ、あずさ」
「・・・・・・・・・・・・」

 思春期真っ盛り、青春真っ盛りの彼女たちにとっても、その男子生徒は衝撃的だったらしい。
 興奮した様子の唯や律、嗜める澪や憂や梓も少し頬を赤らめていた。

 とりあえず遅刻しそうだから、校舎の中へと入ろうとする一同。
 そこで澪は、1人だけ付いてきてない者がいることこに気が付いた。

「どうしたんだ、むぎ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「お~~~い、むぎ。遅刻するぞ?」
「え!? あ、はい。今行きます!」

 ポーっとすた表情の紬が慌てて澪たちへと駆け寄る。
 そんな彼女の様子に、澪は首を傾げた。
 一瞬だけ浮かんだ可能性に、まさかね、と即座に否定していた。

 だが澪の考えは勘違いも甚だしかった。
 琴吹紬は高校に入るまで、ピアノをやっていた。
 彼女は、あの男子生徒を見たことがあったのだ。

(あの人は・・・・・・まさか・・・・・・・・・・・・)

 日本で、いや世界中でピアノをやっている人なら知らぬ者はいない人物。
 あまりにも有名すぎて、そして唐突に1年ほど前からピアノ界から姿を消した、今も生きている伝説。

「まさか・・・・・・『天使の指先』の鳴海歩じゃ・・・・・・?」

 自分の小さなコンクールの賞などとは比べ物にならないくらいの、才能の持ち主。
 日本を代表し、世界でも有名なピアニスト、鳴海歩。

 彼がこの高校に入ってきたなど、紬は信じられなかった。
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Crépusculeのブログです。
(クレプスキューレと読みます)
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進行状況、小言、など展開(?)
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